東京弁護士会
性の平等に関する委員会

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東京都足立区議会における区議会議員による性的少数者に対する差別発言について(2021年1月号)

東京都足立区議会における2020年9月25日の区議会定例会一般質問において、自民党の白石正輝議員が「L(レズビアン)G(ゲイ)についてだけは、もしこれが足立区に完全に広がってしまったら、足立区民いなくなっちゃうのは100年とか200年の先の話じゃない。」「L(レズビアン)だってG(ゲイ)だって、法律で守られているじゃないかなんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう。」という趣旨の発言をした。これに対して批判の声が上がったことを受け、区議会自民党は同年10月6日、白石議員を呼び厳重注意し、それに加えて鹿浜昭議長も、白石議員に厳重注意のうえ、区議会ホームページに「議員としてふさわしくない誤解を招く表現があり、不快な思いをされた方々に心からお詫び申し上げます」とのコメントを出した。しかし、同日に行われた毎日新聞のインタビューにおいて、白石議員は謝罪を拒否し、「LGBTを認めないということではなく、法律的に擁護しなきゃいけないことではないと思っています。渋谷区とか世田谷区が(同性間のパートナーシップを認める)条例を作ったでしょう。ああいうのは必要ないという考えです。」「基本的には個人の生き方だから、民法の中に(想定されて)ない生き方だからね。一般的でない生き方を特別に擁護する必要ないでしょう。」「LとGは、楽しいからと選んでいると思いますよ。」と発言した。

そして、同月20日の足立区議会の本会議で白石議員は上記発言を撤回し、謝罪したが、「普通の結婚をして、普通に子どもを産んで、普通に子どもを育てることがいかに人間にとって大切なことであるか」と述べた部分では、「普通の」のみ取り消すよう求めたので、婚姻が認められておらず、子どもを持つことが困難な状況にある同性愛者に対する配慮がなされているとは言い難い。白石議員は発言を撤回したものの、「差別的な発言と受け止められる表現であったとあらためて認識しております」と発言しており、受け取り方の問題であって差別発言ではないとしている点に問題がある。また、あくまでも撤回したのは本年9月25日の区議会定例会での一般質問での発言であって、毎日新聞のインタビューでの発言については撤回がなされていない点に、問題は残っている。

まず、白石議員が根本的に理解を誤っている点として、性的指向は後天的に個人が選び取れると考えているようであるが、趣味嗜好ではなく、個人の意思で変えられないものである。よって、性的指向や性自認のあり方がいまだ社会において典型とされているあり方と異なる者、同性愛者を含む性的少数者に関する問題は、人権の問題であって、趣味の問題ではない。

また、白石議員の発言は、同性間の婚姻を法制化するなど同性愛者を法的に保護することと少子化を結びつけるものであるところ、これは、同性愛者を法的に保護しないことによって同性愛者が自らの性的指向を押し殺して異性と婚姻し子をもうけることを期待するものであり、そのような発想自体、同性愛者の人権を無視するものである。少子化問題は、未婚化・晩婚化(若年層での未婚率の増加や初婚年齢の上昇)、有配偶出生率の低下など、様々な要因が複雑に絡み合ったものであり、同性愛者の存在が少子化問題を惹起しているものではない。むしろ、同性カップルで子育てをしている家族も存在しているが、白石議員の発言は、同性同士では子は生まれないという側面のみに着目した、現実を見ない発言である。

上記発言では、性的少数者の法的保護は不要とし、パートナーシップ条例にも否定的な見解を示しているが、令和2年10月1日時点で60自治体が導入しているものであり、同性愛者に対する法的保護に消極的になるべきではない。性的指向や性自認のあり方の違いによって差別をすることは、平等原則(憲法第14条1項)によって厳しく禁止されている。また、民法で同性間の婚姻が認められていないことは、誰かを性的指向や性自認の違いゆえに差別することを許す理由とはならないし、憲法において確認されている人権を同性愛者等が享受することを否定する理由ともならない。

白石議員は、上記インタビューで、性的少数者につき、「私のまわりにはまったくいないし、ニュースの報道の範囲しか知りません。会ったことがない。」と述べているが、性的少数者に対する差別・偏見が根強く残っている日本社会において性的少数者が自らの性的指向・性自認を明らかにすることができないという実態を全く踏まえない発言である。自身の周りにカミングアウトした性的少数者がいるかいないかにかかわらず、区議会議員という公的な立場にある者として、多数派のみならず少数者の人権に最大限に配慮しなければならないことを、同議員は反省をもって認識する必要がある。

しかし、これは白石議員個人の問題と片付けてはならない。区議という立場で、区議会で発言したことにより世間の耳目を集めたまでであり、おそらく、同じ発想を持ち、上記発言に賛同する者も存在するであろう。白石議員一人が特殊な意見を持っているというわけではなく、同性愛者を嫌悪して少子化の元凶だとする意見や、同性愛者は差別されていないので保護の必要はないという、これまで潜在的に存在した意見が、区議会で明らかにされたということではないか。
これらの意見は、当事者の声を聞かないことや、知識の欠如から生じるものであって、白石議員一人に反省を求めても真の解決にならないであろう。足立区にとどまらず、日本中にセクシュアル・マイノリティについての正しい知識をより一層広めていかなければ、このような差別は繰り返されかねない。

足立区は、この発言をきっかけとして、区長らが出席して当事者から直接話を聞く意見交換会を3回開催した。このような騒動が起きたからこそ実現できたものであるが、白石議員個人の謝罪で幕引きとせず、区としてセクシュアル・マイノリティの意見を聞く姿勢は評価できよう。
ただし、単なるポーズで終わることなく、実際の区政にセクシュアル・マイノリティの声を生かしてこそ、足立区議会に対する信頼を回復できるのではないか。
これから足立区がどのように変わっていくのか、見守りたい。

そして、今回、区議会議員という立場の者であっても、差別意識が存在することが明らかになった以上、立法を担う立場にある者の差別意識や偏見により、セクシュアル・マイノリティの権利を保護する立法がなされないおそれがあるという危険性も白日の下にさらされたのではないかと思う。

そこで、国会及び各地方議会、全政党・議員に対し、議場等公共の場での性的少数者に対する差別発言・行為が行われないよう強く望む。そして、議員らにセクシュアル・マイノリティについての正しい知識を学ぶ機会を与え、当事者との意見交換を実施し、「見えない者」と扱われてきたセクシュアル・マイノリティの具体的な意見を知ることで、セクシュアル・マイノリティの権利につき、より一層の立法的保護が進むことを望む。

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