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性の平等に関する委員会

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「結婚の自由をすべての人に」訴訟の進捗について(2022年12月7日号)

2019年のバレンタインデーに始まり、全国5か所で進行中の「結婚の自由をすべての人に」訴訟においては、原告らより、法律上同性同士のカップルの婚姻が認められないことは憲法違反であるとの主張がなされています。

この訴訟については、これまでに2つの判決が言い渡されていました。1つ目は、2021年3月17日の札幌地裁判決で、2つ目は2022年6月20日の大阪地裁判決です。

このうち札幌地裁判決は、現在の法律は同性愛者に対する差別であるとして、平等原則を定める憲法14条に違反するという判断を下しました。一方、大阪地裁判決は、同性カップルに婚姻を認めていない現在の法律には合理性があるとして、憲法には違反しないと判断しました。なぜ、判断が分かれたのか。それは、婚姻制度の目的をどのように捉えるかによります。

婚姻制度の目的について、札幌地裁判決は、子どもの有無にかかわらず、カップル2人の共同生活自体の保護も重要な目的であるとしましたが、大阪地裁判決は、二人の間の子を産み育てる関係、すなわち自然生殖を保護することが、婚姻制度の目的だとして、自然生殖ができない同性カップルに結婚を認めないことには合理性があるとしたのです。

しかし、大阪地裁判決の理解が誤っていることは明らかです。なぜなら、大阪地裁判決の論理によれば、子どものいない異性カップルには婚姻が認められないことになるはずなのに、実際には、子どもの有無にかかわらず、異性カップルには婚姻が認められているからです。そもそも、子どもを持つか否かは、非常にプライベートな事柄であり、そのような事柄によって婚姻できるか否かという差異を設けることは許されません。そうであるからこそ、日本の法律は、婚姻の要件として、子どもをもつことを求めていないのです。社会の認識としても、婚姻の目的は自然生殖にあるとか、子どもをもたないカップルは婚姻できなくてもよい、などという認識が一般的であるとは到底言えません。大阪地裁判決は、法律の要件の定め方とも、社会の認識とも、婚姻の実態ともかけ離れた、説得力を欠くものと言わざるを得ません。

以上の札幌地裁判決・大阪地裁判決に続き、2022年11月30日、3つ目となる東京地裁判決が言い渡されました。弁護団による声明は以下のとおりです。

弁護団声明:こちら(PDF:170KB)からご覧ください。

札幌の訴訟も大阪の訴訟も、現在はそれぞれ高等裁判所へと審理の場が移っています。東京の訴訟についても、今後は高等裁判所へと審理の場が移ることになります。このコラムでは、今後も、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の進捗について、適宜取り上げていきます。

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