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憲法問題対策センター

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第10回「古くて新しい憲法のはなし③」(2022年1月号)

弁護士 津田二郎(東京弁護士会憲法問題対策センター事務局長)

「大人になる」ってどういうこと?
1 新成人おめでとうございます
2022年1月10日は成人の日でした。新成人の皆さん、おめでとうございます。成人を迎えると「大人の仲間入り」と言われますが、「大人になる」とはどういうことでしょうか。

2 自分自身と社会への責任
多くの方が成人になったときにまず思いつくのは選挙権を持つことではないでしょうか。また、犯罪報道では実名が報道されることを思いつく方もいるかもしれません。
これらは、自分自身の行動に責任を持つとともに、社会に対しても責任を持つことを求められることに関係があるように思います。また、「『大人』になったら人に迷惑をかけてはいけない」などと教えられた方もいるかもしれません。これもまた、自分自身と社会に対して責任をもつ自覚を促すことを求めることを意図していると思われます。

3 大人だったら「人に頼ってはいけない」のか
もっとも大人だったら「人に頼らないで」生きなければならないのでしょうか。
例えば現在、新型コロナウィルス感染症の感染拡大を受けて、アルバイトの先がなくなったとか、業績悪化を理由として解雇されたとか、賃金が減らされたりするなどして、生活に困っている方もいるかもしれません。大学・専門学校に通学している方で学費や生活費の目途がつかなくなった方もいるかもしれません。自分ではないが、家族や親戚、友人や知り合いの中にそういった問題を抱えている方がいるかもしれません。
このような状況に自分だけで対応することは容易ではありません。一方、既にフードバンクなどの食糧配給ボランティアを利用したことがある方もいるかもしれません。私は、利用できるのなら、どんどんほかの人を頼るべきだと思います。

4 「自分らしくある」ために適切に人に頼ろう
憲法は、「全て国民は個人として尊重される」(第13条)と定めています*[1]。「個人」として「尊重される」とは、一人一人が自分らしくいられるようにするということです。国は、国民一人一人が「自分らしく」いられるように全力でサポートしなければなりません。一方国民は、自分が「自分らしく」いられるように国を頼っていいのです。
経済的、社会的、その他の理由で生きづらさを感じているのなら、それは「自分らしく」いられないということです。生きづらさを抱えている方は、一人で解決しようとしないで、積極的に誰かに助けを求めてください。

そして私たち弁護士も、そのような生きづらさを抱えている方に力をお貸しする立場にあります。どうぞ困ったときには、私たちにも頼ってください。
「社会」はあなた自身とそれ以外の多くの人で成り立っています。ですからあなた自身の生活に責任を持つことは、同時に社会的な責任を果たすことにもつながっています。誰かの力を借りて「生きづらさ」を解消することは、決して大人としての責任を果たしていないことにはなりません。むしろ、大人であればこそ、必要な時に適切に人に頼って、「自分らしく」生きていけるように努力すべきだと思います。


*[1] 憲法第13条
すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

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