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憲法問題対策センター

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第9回 東アジアを巡る国際情勢の変化と日本人の戦争意識(2021年12月号)

弁護士 桒原周成(憲法問題対策センター市民・高校生部会部会長)

1993年8月15日の全国戦没者追悼式で細川首相がアジアの戦争犠牲者に対して初めて哀悼の意を表して以来、この式典での首相式辞ではアジアへの加害の事実に必ず言及するようになりました。ところが、2013年の安倍首相の式辞以降、加害への言及がなくなりました。

戦後の日本社会では、「保革」の枠組みを超えて、悲惨な戦争を二度と繰り返してはならないとの幅広い合意が形成されていました。
日本は、ポツダム宣言をふまえた東京裁判によって「1928年~1945年までの侵略戦争など」が裁かれ、この判決の受諾が明記されたサンフランシスコ講和条約によって国際社会に復帰しているので、当然と言えば当然のことでした。しかし、東京裁判、サンフランシスコ講和条約における中国と韓国の不在に起因して、日本人の中にアジア太平洋戦争はアメリカとの戦争であったとの意識を生み出し、中国や韓国に対する戦争責任を曖昧にしてきました。

このような国民意識に付け込むように、1990年代に歴史修正主義が台頭、侵略戦争・植民地支配に対する国民の認識も次第に暗転し、中国や韓国に対し、「これ以上謝罪の必要はない。」といった意識が広がってきました。

コロナ禍に気をとられているうちに、中国や朝鮮半島を巡っては、台湾問題を巡る米中対立や北朝鮮のミサイル発射などの厳しい国際情勢に対処するためとして、軍拡と基地強化が図られ、敵基地攻撃論や憲法改正論まで政治日程に挙げられようとしています。

日本人が、侵略戦争・植民地支配の事実に対する認識をあいまいにしたまま、自衛権行使の範囲・条件についての議論も不十分なのに「たいしたことはない。」とばかり国際情勢に流されていくことは、再び反省のない戦争への道を歩み始めることにつながりかねません。

「戦争は暗い顔では近づいてこない。」
昭和史研究者のこの警句を肝に銘じたいと思います。

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