東京弁護士会
憲法問題対策センター

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第7回 ワクチン接種者に対する優遇措置について(2021年10月号)

弁護士 村田 智子(東京弁護士会憲法問題対策センター副委員長)

新聞報道等によれば、政府は、8月下旬、海外渡航者向けに発行している新型コロナウイルスワクチンの接種証明書を、国内の商業施設などで積極的に活用する方針を固め、デジタル化を実現させた上で国内利用に踏み切りました[i]。その後、ワクチン接種証明書のデジタル化の動きが急ピッチで進んでいます。
また、一部の自治体が、独自のコロナワクチン接種「証明書」の導入を目指しているということです[ii]

このまま進めば、年内には、「ワクチン接種済者には割引・ワンドリンクサービス」等のサービスが、国内の様々な場所で実施されるのではないかと思われます。また、さらに発展して、「飲み屋には2名以内しか入れないが、ワクチン接種済者であれば2名を超える入店も可能」という取り扱いが普及するかもしれませんし、「ワクチン接種者でなければ入場(入店できない)」という店も出てくるかもしれません。
このようなワクチン接種済み者に対する優遇措置に関し、私は、非接種者に対する差別や偏見、排除が生じてしまうのではないかということを危惧しています。

ワクチンを接種しない方々の、接種を希望しない理由は様々です。私が周囲の方から聞いた限りでも、ワクチンの効果に疑問を感じる、ワクチンの副反応や副作用に強い不安を感じる、接種によりアナフィラキシーショックが起きる可能性がある、持病の悪化が怖い等の理由がありました。それぞれの方の判断は、接種を希望する方の判断と同じように、尊重されるべきです。
しかも、日本は、極めて同調圧力が高い国です。
例えば、先の例で、3名で飲み屋に入店しようとした場合、2名は接種済みだけれども1名は接種していなかったために3名で入店できなかった場合、非接種の1名は非常に肩身の狭い思いをしてしまうのではないでしょうか。

日弁連は、2021年6月11日、「新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う法的課題や人権問題について引き続き積極的に取り組む宣言」を発表しました。この宣言の中には、「ワクチンの有効性及び安全性について不安を持つ人もいる中、感染状況の収束への期待による過度の接種推奨等から、接種対象者の自己決定権が侵害されるおそれがある。また、接種を選択しなかった人に対する差別や偏見が生じる危険性も指摘されている。」という一文があります。
今、この一文を思い起こすべき時期に来ているのではないかと思います。

ワクチン接種者に対する国内での優遇措置は、必要最小限、例えば「高齢者の施設の訪問についてはワクチン接種済みであることを条件する」というようなケースにとどめるべきではないかと考えます。


[i]讀賣新聞オンラインニュース2021年8月27日
[ii]朝日新聞朝刊2021年9月20日

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