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「冤罪と三権分立~政府は裁判所の「証拠をねつ造した」との判断を尊重しなければならない~」(2024年11月号) - 第34回「表現の自由の保障の意味を今一度考える」(2024年10月号)
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- 第32回「『軍事化とジェンダー』を考える ~四会憲法記念シンポジウムの報告~」(2024年7月号)
- 第31回「古くて新しい憲法のはなし⑪ 死刑制度と憲法」(2024年3月号)
- 第30回 映画「オッペンハイマー」と核兵器について(2024年2月号)
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- 第27回「古くて新しい憲法のはなし⑩ 労働者は団結することによって守られる~ストライキと憲法~」(2023年11月号)
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- 第24回 「坂本龍一さんと日本国憲法」(2023年6月号)
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第3回「古くて新しい憲法のはなし② 憲法に書いてあることは「理想」なの? 」(2021年7月号)
弁護士 津田二郎(東京弁護士会憲法問題対策センター事務局長)
1 憲法に書いてあることは「理想」なの?
さて、憲法は、「市民の生活を守るために決められた、政治を行う者こそが守らなければならない、国の在り方を決めた、国内で最も効力の強いルール」であること、そして、日本の憲法では、①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義の3本柱が国のあり方として決められていることを前回「古くて新しい憲法のはなし①」でお話しました。
憲法について「憲法は国の未来、理想を語るもの」という人がいます。本当でしょうか。
2 憲法前文は国の目標が書いてある
日本の憲法には、「前文」があります。前文には、具体的な権利や義務が書いてあるわけではないけれども、①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義を柱にしてこれからの国づくりをするという決意が書いてあります。天皇が政治の中心となっていて、国民には今ほど自由が与えられず、やがて戦争を始めて負けてしまった、戦前の憲法による国づくりへの強い反省が込められています。
3 憲法の3本柱は「理想」なのかな
さて、理想とは、辞書に「考えられるうちで最高の状態のもの」とあります。
例えば、①国民主権は、「①国の現在の問題や将来の問題に対応する政策は国民自身が決められ、性別を問わず誰でも口出しできること」と説明しました。この柱によって、公職選挙法は、18歳以上の男女に選挙権を認めています。
戦前には、20歳以上の男性は政治に口を出すことができる参政権が認められていましたが、女性には選挙に参加することも政治的な集会を自分で開催したり、それに参加したり、政治的なグループをつくったり、それに参加したりすることは認められていませんでした。
②基本的人権は、「自分らしく生きることを国が邪魔をしてはいけないこと」と説明しました。そのために自由に意見を言ったり、本を出版したりする表現の自由や、好きな職業に就いたり、お店を営業したりする経済活動の自由が認められています。
ところが、戦前には、こういう自由は、「法律の範囲内」とか「安寧秩序と臣民の義務の範囲内で」(国や社会が平和で安全であって、家来としての義務の範囲で)だけ認められていました。そのため、法律によって、特定の意見や特定の考え方を「危険思想」と決めて取り締まったりしていました。取り締まりによって命を落とすこともありました。
③平和主義は、「ほかの国と軍事力で争うのではなく、話し合いによって紛争をしないようにすること」と説明しました。
戦前は、日本の軍隊がほかの国に攻め入って占領し、財産や物資を奪ったり、市民を傷つけたりしました。また、無理やり日本に連れてきてひどい環境で危険な仕事をさせたりしました。けれども物資に乏しい日本は、結局戦争に負けてしまい、日本の国内外に大変な犠牲を生じさせました。このような反省から、もう軍事力に頼って外国と争うのはだめだと考えてできたのが「平和主義」です。
4 憲法を「実現できない価値」としてしまってはいけません
「理想」の意味を、「実現できない完全な価値」と考えると、「政治を行う者こそが守らなければならない、国の在り方を決めた、国内で最も効力の強いルール」であるはずの憲法なのに、「実現できないのだから」という理由で守らなくてもよい口実を与えることになります。それでは憲法を定める意味がありません。この意味で「理想」という言葉を使う人は、戦前の世界から今の憲法を眺めているといえるでしょう。
戦前にあったことを反省して今の憲法が作られたのですから、憲法に書いてあることを実現不可能なこととしてしまってはいけません。