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憲法問題対策センター

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第28回「先島諸島を訪問しました」(2023年12月号)

弁護士 村田 智子(東京弁護士会憲法問題対策センター副委員長)
先島諸島を訪問しました

10月下旬、仲間の弁護士と一緒に先島諸島を訪問しました。
ご存知の通り、先島諸島には、次々と自衛隊が配備されています。その状況を確認するのが、この訪問の目的でした。
1日目の宮古島では、保良弾薬庫を見学した後、住民の方と交流し、午後は住民の方のご案内で準天頂衛星システム(軍事レーダー施設)、千代田駐屯地、アリランの碑(日本軍性奴隷の碑)を見学しました。
2日目の与那国島では、インビ岳レーダーを車窓から、久部良集落近くのレーダーを小中学校の前から見学し、与那国駐屯地を車窓から見学し、さらに港湾予定地等を見学してから、住民の方々と意見交換をしました。
3日の石垣島では、地元の方々からお話をうかがった後で、戦争マラリアの碑や、石垣駐屯地が見える展望台を訪れました。

訪問を通して感じたことをごく簡潔に申します。
まず、自衛隊基地の配備により、住民の生活が脅かされているということです。宮古島の保良弾薬庫にはミサイル弾薬が保管されていますが、一番近い民家から約250mしか離れていないため、火事が起こってそれが火薬に燃え移ったら大爆発が起きる危険があり、住民が逃げることなどできません。万一、基地が攻撃にさらされた場合も、同様です。沿岸監視の電子線部隊が常駐する与那国島の久部良集落近くの警戒管制レーダーは小中学校から見えるところに設置されていますが、強い電磁波を出しており、住民への健康被害が懸念されます。自然破壊のおそれもあります。例えば与那国島では、サンゴ礁の入り江から谷に囲まれた湿地に港を建設する計画があるということです。実現された場合、与那国島の自然に大きな影響が出ると思われます。 
次に自衛隊基地をめぐって、住民が「分断」されている、より正確に申しますと「引き裂かれている」ような状態に置かれているということです。与那国島では、住民投票で賛否が分かれて以来、集落の中で反対の声をあげにくくなっていると聞きました。宮古島では、基地の前で反対の座り込みを続けている方から、集落の集会で自衛隊の問題を話しにくくなっていると聞きました。
さらに、住民に、十分な情報が開示されていないという現実です。与那国島では、住民の方から、「いつの間にか、自宅が線引きされていた(重要土地利用規制法の「注視区域」に定められていた)」という声を聞きました。
各島で目の当たりにした現実、そして突き付けられた課題はあまりにも重く、まだ頭の中も心の中も整理できていないのですが、有事に仮想敵国から標的になる先島諸島が直面している現実は、日本という国全体が直面している現実そのものであることは間違いないと思っています。
自分に何ができるのか、考えていきたいと思います。

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