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第23回 「憲法とSDGs」(2023年2月号)
弁護士 堂野 達之(東京弁護士会憲法問題対策センター企画部会長)
「憲法とSDGs」
1.SDGsとは?
この数年、新聞、テレビ等のメディアで、SDGsという言葉を見かけないことはありません。
SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称です。
2015年9月に開催された国連持続可能な開発サミットにおいて、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。その中で、2030年までに国連加盟国が達成しなければならない国際目標として決められたのがSDGsです。SDGsは17の目標で、その下に169のターゲット(達成基準)が定められています。
2.SDGsの17の目標
ロゴで使われているシンプルな標語はこちらです。
① 貧困をなくそう
② 飢餓をゼロに
③ 全ての人に健康と福祉を
④ 質の高い教育をみんなに
⑤ ジェンダー平等を実現しよう
⑥ 安全な水とトイレを世界中に
⑦ エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
⑧ 働きがいも経済成長も
⑨ 産業と技術革新の基盤をつくろう
⑩ 人や国の不平等をなくそう
⑪ 住み続けられるまちづくりを
⑫ つくる責任 つかう責任
⑬ 気候変動に具体的な対策を
⑭ 海の豊かさを守ろう
⑮ 陸の豊かさも守ろう
⑯ 平和と公正をすべての人に
⑰ パートナーシップで目標を達成しよう
3.SDGsのポイント
SDGs(2030アジェンダ)は、要約すると「すべての人を貧困と欠乏から解放すること」「地球を癒し安全にすること」を目的としています。
これらを実現するために「誰一人取り残さないこと」が大切であるとしています。
4.SDGsと憲法
SDGsが発表されたのは2015年であり、10年も経っていません。では、SDGsは最近になってできた新しい概念なのでしょうか?
このSDGsと同じ内容を謳っているのが、その70年近く前に制定された日本国憲法です。
日本国憲法は、前文第2項において
「われら(※注:日本国民)は、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」
と宣言しています。
これはまさに、人類を貧困や欠乏から解き放ち、地球を癒し安全にするというSDGsの理念を先取りしているものです。
SDGsは「誰一人取り残さない」ことを謳っています。「誰一人取り残さない」とは、言い換えれば、最も弱い立場にある人の最も重要な権利が守られるべきということです。
日本国憲法は、第13条で「すべて国民は、個人として尊重され」、生命・自由・幸福追求の権利は「最大の尊重を必要とする」として、人が人として有する権利を基本的人権として保障しており、「誰一人取り残さない」SDGsの理念を体現していると言えます。他にも日本国憲法は、第14条で法の下の平等を保障し、第25条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」としていわゆる生存権を保障し、第26条で教育を受ける権利、第27条で勤労の権利、第31条で法定手続の保障、第32条で裁判を受ける権利などを保障しています。いずれも、SDGsの17の目標に関わってくるものです。
5.SDGsそして憲法を身近なものに
SDGsというと、最近に外国でできて日本に輸入されたもの、というイメージを持たれがちかもしれません。しかし、その理念は、既に70年も前から、日本国憲法が明確に宣言しているのです。
これはすなわち、時代が憲法に追い付いてきたということを意味しています。
最近は、個人も企業も、SDGsの理念を自身の身近な生活や事業活動に活かしていく取り組みが盛んになっています。これらの取り組みをより深めていくためには、憲法の条文を紐解いてみるのもよいのではないでしょうか。