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憲法問題対策センター

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第1回「憲法はあなたを守っているのか」(2021年5月号①)

弁護士 津田二郎(東京弁護士会憲法問題対策センター事務局長)

東京弁護士会の憲法問題対策センターは、市民の皆さんに憲法問題について情報を提供したり、会長声明を通じて人権問題などについて警鐘を鳴らしたりしています。
そのとき、私たちが大事にしているのは、「憲法の価値観」です。憲法は、国や自治体などの権力が市民生活に踏み込んで規制したり、生活を危うくさせて生きづらくさせるようなことを禁止して、私たちの生活を守ってくれています。

だけど、憲法が「ある」だけで私たちの生活は本当に守られているのでしょうか。
女性の権利の問題を例に考えてみたいと思います。
日本国憲法は、1947年5月3日に施行されました。施行というのは、この国に通用するルールとして効力を持つことです。
日本国憲法では、13条で個人の幸福追求権が*[i]、14条1項で「法の下の平等」が*[ii]、24条で家庭生活が「両性の本質的平等」に基づいて行われるようにすることが*[iii]、それぞれ定められ男女の平等が徹底されました。

それ以前の大日本帝国憲法の下では、1925年改正普通選挙法のもとでも25歳以上男子の普通選挙権は認められていましたが、女性には認められていませんでした。そればかりか女性の政治活動は禁止されていました*[iv]。さらに婚姻した女性である「妻」は「無能力」とされて財産を管理することが認められていませんでした。また既婚女性との不倫のみを処罰する犯罪もありました*[v]
これらに代表されるような女性差別は日本国憲法の施行によって社会から一掃されたのでしょうか。皆さんが日々実感されているように、現在でもまだなくなっていません。でも少しずつは変わってきています。


*[i]憲法第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
*[ii]憲法第14条1項 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
*[iii]憲法第24条
1 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
*[iv]1890年集会及政社法。1900年結社の禁止(治安警察法5条1項)集会の禁止(治安警察法5条2項<1922年改正前>)
*[v]姦通罪(旧刑法183条)

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