アクセス
JP EN
憲法問題対策センター

憲法問題対策センター

 

第11回マイナンバーカード普及推進の問題点(2022年1月号)

弁護士 片木 翔一郎(東京弁護士会憲法問題対策センター委員)

1マイナンバーカードの普及状況
2020年9月から、マイナンバーカードを作成して所定の手続きを行うと5000円相当の電子マネー等が付与されるという「マイナポイント事業」が実施されました。
その効果か、マイナンバーカード取得率は2020年1月に約15%だったのが、2021年12月には約40%に達したそうです。
その後も、普及推進事業は続き、現在は、マイナンバーカードを保険証と結びつけると何千円分、預金口座と結びつけると何千円分のポイント付与と、まるで民間企業がするようなキャンペーンが展開されています。

2マイナンバーカード普及の狙いと危険性
マイナンバーカード普及の狙いは、マイナンバーの利用を推進し、行政の保有する情報の一元化を進めて効率化するところにあります。種類の違う様々な情報をマイナンバーで紐づけて管理することで、利用しやすくなるからです。
他方で、国家権力が国民の情報を利用しやすくなるということは、裏を返せば国民の一人一人の情報の監視が以前より容易になるということです。これは監視国家化につながります。
また、情報漏洩が起こった際には被害が拡大するのではないかとの意見もあります。
特に、これらの問題については、今現在、マイナンバー(カード)がどのように運用されているかという観点からの検討だけでは不十分です。国家権力が制度を作るときは、国民の嫌悪感の少ないものから少しずつ作ることがあります。仮に現在の運用に問題がなかったとしても、将来的に運用が拡大・変更されると、濫用や情報漏洩のおそれが高まる可能性があります。

3マイナンバーカード普及のための優遇措置の問題点
ところで、マイナンバーカード普及のための優遇には、ワクチン被接種者の優遇(憲法の小窓「第7回 ワクチン接種者に対する優遇措置について」参照)と似たところがあります。マイナンバーカードを発行しない自由があるとはいっても、コロナ禍で生活に困窮して生きるか死ぬかというところで、給付金やポイントを目の前にぶら下げられたら、飛びつかないことは難しいです。ワクチンを打ちたくないとか、マイナンバーカードを発行したくないと思っていても、同調圧力や経済苦により自分の真意に基づく選択が取りづらくことが考えられます。
はたして、「●●しなければ罰則」と国民を強制するのは駄目で、「●●すれば優遇」と国民を誘導するのはよいと、簡単に考えてよいものでしょうか。これは、ワクチンやマイナンバーカードの普及だけにとどまらない問題です。

憲法問題対策センターメニュー