東京弁護士会
公益通報者保護特別委員会

公益通報者保護特別委員会

 

公益通報って「社会」にとって良いもの?悪いもの?(2016年11月号)

 和の精神を重んじる日本では、「内部告発」というと、協調すべき組織内の人間が、組織の利益を害する行為をするというイメージがあるため、組織内の他の 職員からの告発者に対する視線が冷たくなり、告発者が退職せざるを得なくなるような事例もしばしば見受けられます。私の依頼者の中にも、告発をした結果、 嫌がらせを受けて、職場を退職せざるを得なくなった方もおり、代理人として、非常に悔しい思いをしたこともあります。
 しかし、本来、内部告発 は、社会や組織にとって有用なもので、促進されるべきものなのです。すなわち、内部告発により、不祥事(食品偽装、粉飾決算等)が社会に明らかとなって、 これが是正をされることにより、市民が不利益を受けることを防ぐことができます。また、このような不祥事が社会に明らかになる前に、組織内部における通報 を通じて組織が情報を把握し、問題が大きくなる前に組織内で不祥事を是正し、組織自らが自発的に不祥事を行ったことを社会に明らかにすることができ、これ により組織の信用を守ることにも繋がります。
 このような、内部告発が社会にとって有用であるという観点から、諸外国においては、内部告発を厚く 保護し、促している国もあります。例えば、オーストラリアの公益開示法(Public Interest Disclosure Act 2013)や、韓国の公益申告者保護法では、違法行為に加担した共犯者が告発をしやすいように、告発をしたことによる免責規定(リニエンシー規定)を設け ています。また、アメリカの不正請求禁止法(False Claims Act)及びドッド・フランク法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)や、韓国の公益申告者保護法では、告発をより促進するため、告発をしたことにより報奨金を得られる制度を設けています。
 このような制度を設けている背景には、通報が「社会にとって良いものである」という認識が社会の中で共有されているという事実が存在するのでしょう。
  日本においては、まだ、このような認識が広く共有されてはいないのかもしれませんが、先に述べたとおり、内部告発が社会や組織にとってメリットとなり得る ものであるわけですから、不祥事を発見した場合には、積極的に内部告発をすることが望まれます(ただ、告発の方法については、慎重に検討する必要があるで しょう)。適切に内部告発が行われ、不祥事が是正されるというサイクルを積み重ねることを通じて、日本においても、内部告発が「社会にとって良いものであ る」という認識が共有されていくことになるのではないでしょうか。
 東京弁護士会では、公益通報相談窓口を設けており、守秘義務を負う弁護士が、皆さまの通報内容について、秘密を守りつつ、通報をすべきか、どのように通報をすべきか等について、法的な見地からアドバイスを行うことができます。
 先ほどは、社会のためなどと大上段から話してしまいましたが、不祥事かな、と思われる事案について、悩んでいることがありましたら、あまり気負いをせずに、お気軽にぜひご相談ください。

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