東京弁護士会
公益通報者保護特別委員会

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内部通報制度を広く浸透させるために(2019年6月号)

コーポレート・ガバナンスコード(以下「CGコード」という。)において,内部通報に係る体制整備が求められるようになり(CGコード原則2-5),社会全体としては内部通報制度が相当程度浸透してきたものと思われます。

もっとも,CGコードは,証券取引所が上場会社を対象として規定するもの(いわゆるソフトロー)であり,非上場企業がその遵守(あるいは,遵守しない場合におけるその理由の説明)を求められているわけではありません。

中小企業における内部通報制度の導入割合については,消費者庁の「平成28年度民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」によれば,従業員数100名超300名以下の企業では40.2%ですが,50名超100名以下の企業では24.5%,50名以下の企業に至っては9.3%にとどまります。また,未導入の理由(複数回答)については,「どのような制度なのか分からない」が30.5%,「導入の方法が分からない」と「法律上の義務とはされていない」がいずれも25.7%であり,「必要性を感じない」も16.7%に及んでいます。

内部通報制度は,内部通報を通じて事業者が違法行為等(又はそれがなされようとしている事実)を早い段階で認識し,問題発生を予防したり問題の拡大を抑制したりする機会を提供するものであり,本来的には,企業側にも内部通報制度を導入することには相応のメリットがあるはずです。しかしながら,以上の調査結果を見ると,中小企業において,内部通報制度導入に向けたインセンティブがあまり働いていないように思われます。人員不足等の物理的な問題とは別に,中小企業においては,有名な大企業等と比較して,後に不祥事が発覚した場合に受けるであろう社会的制裁(マスコミ報道に端を発する社会的非難など)があまり大きくならないと見込まれることも,内部通報制度導入に向けたインセンティブが低い要因かもしれません。

なお,導入した内部通報制度が適切に機能するためには,通報者保護が図られていることが必要です。この点については,公益通報者保護法により一定の保護が図られているものの,なお不十分なため,保護対象となる通報者や通報対象事実の拡充など,同法改正に向けた動きが進んでおり,平成30年12月に消費者委員会公益通報者保護専門調査会から報告書が出され,これに対する意見募集(パブリックコメント)が平成31年3月29日まで行われたところです(今後,改正案の策定が本格化するものと見込まれます。)。

このような通報者保護の充実が,内部通報制度を実質的に機能させる上で極めて重要なのはいうまでもありませんが,消費者庁による上記調査結果に照らし,内部通報制度それ自体が広く導入されるようにすることもまた,今後の重要な課題です。この点,内部通報制度導入に向けたインセンティブがあまり働いていないと思われる調査結果に鑑みれば,企業側の自主的な努力ばかりを期待するのは適切ではなく,法制度化も含め,内部通報制度導入それ自体の拡充に向けた適切な社会的仕組みを構築することも,検討の必要があると考えられます。

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