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公益通報者保護特別委員会

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政府が公益通報者保護法の改正案の骨子を示しました(2025年3月号、2025年5月更新) 【法案の閣議決定(3月4日)及び衆議院通過(4月24日)を踏まえて更新しました】

政府は、令和7年1月28日、自民党の会合で、公益通報者保護法の改正案の骨子を示しました。

公益通報者保護法は、令和2年の改正(令和4年6月施行)により、新たに事業者の体制整備義務や従事者指定義務及び従事者の守秘義務が規定され、より実効的な制度となることが期待されました。

しかし、令和5年度の消費者庁の実態調査によれば、多くの企業において、内部通報制度が十分に機能していない実態が明らかになっています。

そこで、令和2年改正法附則第2条(施行後5年を目途とする見直し条項)や、衆議院の附帯決議八、参議院の附帯決議十三も踏まえ、公益通報者保護制度の課題と対応の検討を目的として、令和6年5月に消費者庁に公益通報者保護制度検討会が設置され、公益通報者保護法の改正を視野に、有識者により継続的に検討が行われてきました。

本ブログの前号でも記載した通り、令和6年12月27日には、公益通報者保護制度検討会が取りまとめた報告書が公表されましたが、この内容を踏まえ、今回政府が冒頭の改正案の骨子を作成しました。なお、その後、令和7年3月4日には公益通報者保護法の一部を改正する法律案を国会に提出する旨閣議決定がなされ、4月24日には衆議院を通過しました。

政府の作成した改正案の骨子においては、事業者が公益通報の窓口の担当者を配置しない(従事者指定義務違反)場合に、国が立入検査を行う旨の規定を新設し、また行政の是正命令に従わない場合に刑事罰が科されることが盛り込まれています(項目1)。また、公益通報者の範囲の拡大が目指されています(項目2)。

さらに、事業者が正当な理由なく公益通報者を特定しようとする行為や、通報を妨害する行為については、現行法下でも法定指針に規定されていましたが、これを、法律上も禁止することが盛り込まれました(項目3)。

さらに、改正案においては、公益通報を理由として従業員を解雇や懲戒処分にした場合に、事業者や意思決定に関与した個人には刑事罰が科されます。具体的には、通報者を解雇や懲戒処分にした事業者には3000万円以下の罰金が科せられ、当該意思決定に関与した個人には、6ヶ月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金が科されることが盛り込まれました(項目4)。但し、それ以外の配置転換がなされた場合に対する刑事罰については、将来的課題とし今回の改正には盛り込まれていません。

また、公益通報を理由とする解雇や懲戒処分を受けたとして、通報者が事業者に対して民事裁判を起こした場合には、当該解雇や懲戒処分が「公益通報を理由とすること」についての立証責任について、事業者側に転換されるものとされています。

通報を理由とする分限免職(民間企業における解雇に相当します)や懲戒処分の意思決定に関与した公務員に対しても刑事罰を導入する方針です(項目4)。

公益通報者保護法の一部を改正する法律案が成立した場合には、公布日から1年6月以内で、政令で定める日から施行される見込みです。

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