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公益通報者保護特別委員会

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中小事業者における通報対応の体制整備について(2023年6月号)

 2022年6月に改正公益通報者保護法(以下「法」といいます。)が施行され、常時使用労働者数300人超の事業者は、公益通報対応体制の整備や従事者指定の「法的義務」を負うことになりました(法11条1項・2項)。他方、常時使用労働者数300人以下の企業(中小事業者)は、これらの「努力義務」を負うに留まりますが(同条3項)、そのような中小事業者において、内部通報制度を設けるとして、どのような体制を整備するかについてご相談を受けることがあります。

 例えば、法改正との関係では、「親会社の従業員数は300人超であるため、法に則した公益通報対応体制の整備や従事者指定を行っているものの、子会社の中には従業員数が300人以下の企業もある場合に、グループ内で統一した対応を取るのが良いか」、「現状は300人以下だが、何人くらいになったら法に則した体制整備に向けた準備を進めるのが良いか」といった悩みなどがあるようです。
 これらの個別の論点については、各社のグループの実情、グループ窓口の整備状況、通報の実態、人員体制等に応じて様々な対応が考えられるかと思います。もっとも、不正の早期発見・早期是正の観点からは、「努力義務」を負うに留まる中小事業者であっても、組織運営・人員体制上可能な範囲で、通報者を保護する仕組みや公益通報対応業務の実施等に関し、消費者庁の、公益通報者保護法に基づく指針や、同指針の解説等を踏まえた通報体制の整備を進めるのが望ましいと考えられます。

 中小事業者では、会社の規模が大きくないために、人間関係が濃密であり、特定や不利益を恐れて正面からは不正について声を上げられないケースもあると思われます。そのような場合、匿名通報を受け付け、秘密保持や不利益取扱いの禁止が徹底される内部通報制度があれば、かかる声を吸い上げられる可能性があります。
 また、中小事業者においても、経営幹部からの影響力の不当な行使を防ぐための独立性の確保の仕組み作りは重要です。いざ、経営幹部が関連する通報を受けた場合に適切な対応が取れるよう、あらかじめ、実質的にも独立性の高い地位・権限が保障された 監査役等の監査機関のモニタリングを受ける体制等の仕組みづくりをしておくと良いでしょう。

 中小事業者の中には、人員が少ないために、「内部通報制度を整備しても、通報担当者が調査対応等に追われると実務の方が回らなくなる」、「担当者自身が通報事案に多少なりとも関与している場合、社内で通報対応をできる人員がいなくなってしまう」などの悩みを抱える企業もあるようです。
 そのような場合、上記指針の解説にもあるとおり何社かが共同して社外に窓口対応業務を委託することや、通報対応できる社員を教育して適切な範囲で増員することなども考えられます。まずは窓口を設けて通報を促し、寄せられた通報に一つ一つ対応することで、社内の担当者も、対応フローや対応スキルを着実に身に付け、各企業においてうまくワークする体制の整備に繋げていただけると良いと思います。

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