東京弁護士会
公益通報者保護特別委員会

公益通報者保護特別委員会

 

効果的な通報窓口のすヽめ(2017年8月号)

 昨今いわゆる内部通報制度とかコンプライアンスホットラインとかの名称を冠した通報窓口を設けている会社がほとんどです。筆者もかつて複数の一般企業のコンプライアンス部門に在籍した経験から,通報窓口によくある側面を概観していきたいと思います。
 通報窓口には組織の自浄作用の側面がありますが,その実効性を高めるためには窓口と現場との温度差を失くしベクトルを同じくすることがまずもって肝要だと考えます。コンプライアンスの徹底や不正防止を標榜するサイドとフロントサイドとではえてして認識のズレが生じがちなもの。通報窓口を,会社や組織が制定した多くの制度のうちの単なる一つと捉えるのか,働きやすいクリーンな環境を自分たちで創るための(有益な)ツールと捉えるのか,という制度に対する評価,認識の「温度差」が邪魔をするのです。教科書や雛形どおりのカタチの良い制度をしつらえるだけでは正に,仏造って魂入れず。「温度差」は広がるばかりです。現に,私が過去に外部窓口として担当した法人も形式に拘泥するあまり,制度の目的や本質を見失いかけていた場面に遭遇したことがありました。
 通報窓口を支えるその屋台骨は,その組織が理想として掲げるコンプライアンスの意識醸成と共有にあります。元来コンプライアンスは多義的な言葉なので,十人十色,各社各様の解釈があって当然です。そのコンプライアンスが確定され意識として醸成,共有されてこそ,通報窓口という仏に魂が入るのではないでしょうか。仏に魂が宿ったら,あとは制度を機能させるために腹落ちしやすい表現で制度を紹介し覚えてもらうこと,これが「温度差」を失くすためのポイントです。研修やeラーニングで仰々しくコンプライアンス担当部門が眉間に皺を寄せて説明しても大抵は効果薄(あくまでの私見ですが)でしょう。組織として何としても守りたいポリシーや存在意義のため一人ひとりの協力を乞う,との熱いメッセージが伝われば自ずと制度は機能し始めると信じています。通報窓口といっても,結局は,人と人なのですから。

公益通報者保護特別委員会メニュー