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公益通報者保護特別委員会

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公益通報に関する情報を守るための具体策(2024年4月号)

 公益通報制度において、通報者が安心して通報できる状態にすることは、制度の実効化の肝と言えます。例えば現役の従業員が通報を行う場合、通報後も在職することを想定すると、もし通報に関する情報が社内で適正に管理されていない場合には、通報した事実が不必要に広まるリスクから、通報をためらう要因にもなるかもしれません。そのため、通報に関する情報管理は通報制度の信頼性を左右する問題といっても過言ではありません。
 この点情報管理について、公益通報者保護法に基づいて内閣府が示した指針は、公益通報者を保護する体制のための措置として、「範囲外共有」(公益通報者を特定させる事項について必要最小限の範囲を超えて共有する行為)を防ぐことを挙げています。今回は範囲外共有を防ぐための具体策について、指針の解説で示されているものをご紹介いたします。
 公益通報制度において、特に範囲外共有を防ぐための工夫が必要な局面として、①通報受付段階の情報共有、➁通報に基づく調査段階の情報共有、③社内の情報管理状況、を挙げることができます。
 具体的には①通報受付段階において、受付方法として電話、FAX、電子メール、ウェブサイト等の手段がありえますが、専用の電話番号や専用メールアドレスによって通報を受付けることにより、通報に関する情報と他の情報とを峻別しやすくなります。また通報受付時に、通報事案に関する資料に記載された関係者の固有名詞を仮称表記に代える等、通報者の特定がしにくいように情報を加工する方法も考えられます。
 次に➁通報に基づく調査段階において、通報者を特定させる事項(以下「特定事項」)について、真に必要不可欠ではない限り、調査担当者にも情報共有を行わない等、調査方法に十分な配慮が必要です。調査の過程で、経営幹部や調査協力者等に特定事項を伝達することが真に不可欠である場合には、伝達する相手にはあらかじめ秘密保持を誓約させることや、当該特定事項の漏えいは懲戒処分等の対象となる旨の注意喚起をする等の措置が有益です。
 また、通報者等が特定されることを困難にするために、調査の端緒が通報であることを関係者に認識させないよう、調査方法を工夫することも考えられます。例えば、通報に基づく調査を、定期監査と合わせて行う、抜き打ちの監査を装う、該当部署以外の部署にもダミーの調査を行う、核心部分ではなく周辺部分から調査を開始すること等の工夫が挙げられます。
 最後に③社内の情報管理状況については、通報事案に関する記録・資料を閲覧できる者を必要最小限に限定してその範囲を明確化すること、通報事案に関する記録や資料は施錠管理することや、通報に関する電磁的な情報は、アクセス権限を明確にすることや、操作・閲覧履歴を記録する等の措置が推奨されています。
 以上のとおり、通報事案に関する情報管理については局面に応じた工夫が必要です。チャットツールの普及やファイル共有の簡便化等、情報共有手段が多様化している現在、公益通報制度においても情報管理を適正に行うことがより重要になっています。

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