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公益通報者保護特別委員会

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公益通報を受けた行政機関の対応について(2021年6月号)

1 公益通報に対する行政機関の役割

公益通報者保護法(平成16年法律第122号。以下では「法」といいます。)は、公益通報に関して行政機関がとるべき措置を定めています(法1条)。

具体的には、通報対象となる事実(通報対象事実。法2条3項)の通報先として、「当該通報対象事実について処分(命令、取消しその他公権力の行使に当たる行為をいう。以下同じ。)若しくは勧告等(勧告その他処分に当たらない行為をいう。以下同じ。)をする権限を有する行政機関」に対しても通報することができるとして(法2条1項)、一定の権限を有する行政機関において公益通報に対する適当な措置を行うことを求め、公益通報を端緒として行政機関による監視又は是正機能が発揮されるという仕組みになっています(消費者庁「公益通報ハンドブック」(15頁以下)参照)。

2 公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)による法改正

本コラム(2021年1月号)にも記載のとおり、改正公益通報者保護法(以下では「改正法」といいます。)が2020年6月8日に成立しました。改正法の施行日は現時点では未確定ですが、2022年6月までに施行予定となっています。改正法は、社会問題化する事業者の不祥事が後を絶たないことから、早期是正によって被害の防止を図ることの重要性を念頭として、公益通報者の範囲の拡大(改正法2条1項各号)を含め、いくつもの重要な改正が行なわれています。

行政機関への通報(行政通報)を行いやすくするための改正としては、権限を有する行政機関に対する通報の条件に新たな場合が追加されており、具体的には、通報対象事実が生じ若しくはまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由がある場合だけではなく、そのような相当な理由がない場合であっても、「通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると思料し」、かつ所定の事項(公益通報者の氏名等)を記載した書面を提出する場合(改正法3条2号)についても含まれることになりました。これにより行政通報がしやくすなり、事業者も今まで以上に通報しやすい内部通報体制を構築しないと通報者に行政通報を選択されてしまいますので、事業者においても注意が必要でしょう。

また、通報対象事実に関して一定の権限を有する行政機関において、公益通報に適切に対応するため、「公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。」とされました(改正法13条2項)。ここにいう体制の整備等の具体的な内容については、今後ガイドライン等で示されることになりますが、「①外部からの通報受付窓口の設定・制度の周知、②処分権限等に基づく調査・是正措置、③公益通報者に関する情報漏えいの防止・事後の措置、④これら措置に関する内部規程の整備・運用等」が想定されています(公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第 51 号)に関するQ&A(改正法Q&A)(令和2年8月版)Q3)。



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