東京弁護士会
公益通報者保護特別委員会

公益通報者保護特別委員会

 

居心地のよい社会の実現に向けて(2019年4月号)

社会人で「パワハラ」、「セクハラ」という言葉を聞いたことがない方は、今やほとんどいないのではないでしょうか。国際労働機関(ILO)は2019年に職場でのセクハラや暴力を防止するための条約を制定する方針とのことであるなど、世界的にもハラスメント対策が求められるようになっています。
もっとも、これらの言葉は十数年前にはさほど社会に浸透していなかったと思います。「パワハラ(パワー・ハラスメント)」という用語は、2001年に日本で提唱された和製英語であるとのことですし、「セクハラ(セクシャル・ハラスメント)」という用語は、1989年に新語・流行語大賞を取ったようですが、その後も職場で研修等に取り入れるなどに至るにはもう少し時間が掛かったという印象があります。
今でもこれらの行為がなくなったわけではないものの、企業内でも、研修の実施はもとより、昔と変わらない言動をしている方々が処分を受けたり冷遇されたりし、裁判が起こされることもあるなど、"ハラスメントを許さない"という姿勢が強まっていることは確かといえるでしょう。このような企業の姿勢は、上記の言葉・概念が社会に広まり、これらの行為に対し、勇気を持って異議を唱える人が増えてきたことによって、ようやく実現されつつあるものと思います。
全く別の事象として、最近、企業犯罪2件において、日本版司法取引が行われました。これらの事例は、捜査機関が社内で事情をよく知る方々の通報内容に大きな価値を見出したものといえます。
このように、企業に潜む様々な不正を正すには、内部の方々が声を上げることが重要であり、そのような勇気ある行動の積み重ねによって、少しずつではあっても居心地の良い社会が実現されていくものと思います。企業内部の方々の通報には大きな価値があると思います。
これに対し、パワハラ・セクハラの例でいえば、これらが叫ばれるようになったことで、職場の人間関係が築きにくくなったなどと、弊害を感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それはあくまで"運用"の問題、すなわち、不正は不正として正した上で、その正しいあり方の中でどのように"運用"していくかを模索していくべき事柄であると思います。
このように、まずは" 不正を正す"ということが、社会的に求められているものと考えられます。その中で、公益通報者保護法は、不正を通報した労働者を守る目的で制定されたものであり、通報を躊躇する方々にとって、企業からの不利益処分に対する不安を軽減するものであると思います。
当委員会では、公益通報相談窓口をもうけ、広く、公益通報・内部通報に関するご相談を受け付けております。通報に関する迷いやお悩み等を抱かれている方は、一度、相談してみてはいかがでしょうか。

(注)パワハラ・セクハラについては刑法犯となるようなものでないと厳密には公益通報者保護法の対象となりませんが(同法第2条第3項別表)、通報対象事実として取り扱っている企業も多いようですし、通報窓口とは別にハラスメント相談窓口を設けているところもあります。

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