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公益通報者保護特別委員会

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社内通報窓口担当者の皆さまへ2(2019年12月号)

―通報はカズがいのちではないのです―

わたしは社内弁護士として社内通報窓口を担当しています。このコラムの「社内通報窓口担当者の皆さまへ(2018年8月号)」の執筆者と同様に、社内での業務の一つとして、社内通報窓口を担当しています。このように、東京弁護士会の各種委員会の中でも、公益通報者保護特別委員会には多くの社内弁護士が参加しています。
2018年8月号では、コンプライアンス上の問題とは言えないような通報をテーマにしていますが、今回は、「通報件数」をテーマにします。
通報窓口担当者の皆さまは、少なくとも年に1回、年度ごとの通報件数や内容、その対応について、経営トップやコンプライアンス部門長などの関係者にご報告されていると思います。通報件数が多ければ、「社内通報窓口は従業員に認知されている」と報告するでしょうし、例え通報件数が少なくても、1件でも不祥事の未然防止や早期発見につながる内容が通報されれば、通報件数が多い少ないの評価にはあえて触れずに、「通報窓口は機能している」と評価、報告することが考えられます。
しかし、通報窓口を設置し、社内に通報窓口を周知していたとしても、通報件数が0件だったり、ごくわずかの件数で、かつ不祥事につながる内容でもないという担当者の方も多いのではないでしょうか。
実際に、消費者庁が2016年度に実施した「民間事業者における内部通報制度の実態調査」によると、通報窓口を設置している事業者(1,592事業者)に対し、過去1年間の内部通報件数を尋ねたところ、「0件」が41.6%で最も高く、次いで「1~5件」(30.5%)となっています。また、従業員数別にみると、従業員数の少ない事業者ほど通報件数「0件」の割合が高い傾向が見られ、50人以下の事業者では69.0%を占めているのに対し、3,000人超では4.4%となっている旨の分析がなされています。調査から数年が経過していますが、通報件数について大きな変化はないのではと思います。
内部通報には、通報件数が0件であっても、それは通報すべき事象が発生していないからなのか、発生していても通報されていないだけなのかを確認する方法がない、そのため、内部通報が機能しているか否かを明確に判断することができない、という特徴があります。
また、内部通報は、通報件数の多寡にかかわらず、不正を早期発見し、自浄作用を働かせるためのリスクセンサーとして設置を続け、通報が入ってきた際には適正に対応できることが、当然のこととして求められています。
内部通報担当者にとっては当たり前のことかもしれませんが、経営トップや関係者に対しては、このような通報窓口の特徴や意義をきちんと説明し、理解していただくことが重要だと感じています。

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