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公益通報者保護特別委員会

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「第二の窓」が広がる年(2022年1月号)

現在、令和4年年始に本稿を書いています。
昨年は公益通報者保護法制に関わる方々にとって、変革の1年だったと思います。法が大きく改正され、夏には指針、秋にはその解説が、消費者庁からリリースされました。改正法は今年6月までに施行されますから、現在、通報体制整備の詰めの最中という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
以前、当ブログ執筆者の一人は、通報窓口とは「窓」であり「心を通す穴」である、と表現しました(「通報窓口の『窓』のいろいろ(2017年4月号))。この「窓」は、まずはもちろん、相談者の心を会社に通じさせるものです。しかし同時に、社内現場のモラールが何らかの理由で閉塞状況に陥った場合、通報窓口は、社内と社外が繋がるための唯一の「窓」ともなり得るものです。
平素においては、会社は、自社商品やサービスによって外の世界と繋がっています。しかし、会社が営利組織である以上、自社利益の追求のみが唯一の目標となり、この「第一の窓」が塞がれてしまうリスクは常にあります。通報窓口は、事業組織におけるこのようなリスクを正面から受け止め、自浄作用の回復を目指すための、いわば「第二の窓」であると言えると思います。

通報体制の運用は非常に難しいと言われています。しかし一方、個々の事案が積み重なり、公益通報制度は、少しずつ、わが国にも根付いてきました。今般、法が、2006年4月の施行以来の大改正となったこと自体、そのことを示すものともいえます。
改めて改正法の骨子をご紹介しますと、次のとおりです。
① 行政機関や報道機関等への通報がより行いやすくなります。厳しかった要件が緩和されました。特に、行政機関への通報は、氏名等を記載した書面を提出すれば保護されることになりました。
② 通報者の保護も、より手厚くなっています。労働者のみならず、一定の範囲の退職者や役員も通報者として保護されます。また、これまで通報対象事実は刑事罰の対象となるものだけでしたが、行政罰の対象となるものも追加されました。さらに、要件を満たした通報については、通報者に対する事業者からの損害賠償請求について、その責任が免除されます。
③ 事業者による必要な体制整備が、義務となりました。従業員数300人以下の中小事業者にも、努力義務が課されました。

今年は、このような「窓」がいっそうこの社会に広がり、より風通しが良くなってくるといいですね。

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