アクセス
JP EN
公益通報者保護特別委員会

公益通報者保護特別委員会

 

通報窓口に通報がない会社は良い会社なのか?(2017年1月号)

 「うちの会社にはあまり通報はないと思いますけどね」ということを、内部通報窓口設置のご相談を受ける際に、ご担当者から言われることがあります。その方がどういった趣旨で仰っているのか、その真意はわかりかねますが、おそらくは、「うちの会社はあまり問題がないので、本当はこんな制度必要ないのですけどね」ということが言いたいのかもしれません。
 実際に、あまり通報がない会社というのもあります。しかし、これは問題がないからそうなのかというと、必ずしもそうではないと思います。こういう会社に限って、通報窓口について周知していないとか、従業員が通報し難い建付けになっていることが見受けられます。
 内部通報窓口を設置する目的から考えれば明らかなことですが、制度の建付けや運用を考えるうえで重要なポイントは、できるだけ通報しやすい制度設計にし、社内の雰囲気作りも含めた環境を整え、できる限り問題を早く・広く察知する制度にすることです。内部通報制度は、企業内部の病巣を察知するセンサーのようなものですが、そう考えれば、できるだけ感度がよいに越したことがないことは、おわかりいただけると思います。確かに、センサーの感度をよくし過ぎると、ノイズまで拾ってしまい、処理が大変という面もなくはないです。しかし、こういった問題は、有効なフィルターを入れるなどで対処することもできます。少なくとも、感度を下げることにより、内なる重要な声を聞き逃すよりましだと思います。
 「うちの会社は大丈夫」なんていう考え方を人間の身体に例えると、「私の身体は丈夫だから、健康診断なんて意味がない」というようなものですが、その先には、重たい病気にかかっているのに気づかず、気付いたら手遅れになっていた、などという不幸な結末もあり得ることにご注意ください。
 このように考えてみると、逆説的ではありますが、通報窓口に通報がたくさんある会社って、実はコンプライアンスの観点からは良い会社なのではないかと私は思っています。

公益通報者保護特別委員会メニュー