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公益通報者保護特別委員会

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公益通報制度を有効な制度とするために(2023年2月号)

公益通報者保護法は、2020年に改正され、その後、消費者庁から、「指針」、「指針の解説」が公表され、公益通報をより使いやすい制度とするよう、日々取り組みがされています。本稿では、日ごろの業務上の経験から、各事業者の公益通報制度における問題点について、いくつか取り上げてみます。
まず、事業者内で、公益通報制度自体に周知が十分になされてるのかという点です。これは、そもそも、制度自体や、相談・通報窓口の存在、相談・通報した場合のその後の流れなどを従業員等が理解しているかどうかの問題です。犯罪行為に該当しうるようなセクハラの通報を受けました。その行為自体は数年前のことでした。「なぜ、今通報することにしたのですか?」と質問すると、「当時は、相談窓口があることを知らなかった」と回答されました。通報者は、派遣社員でした。非正規社員も保護される通報者です。非正規社員に対する周知徹底が疎かになっていないか注意すべきです。
次に、従事者の守秘義務が十分に理解されているかという点です。公益通報者を特定させる情報について、従事者は守秘義務を負い、これは刑事罰で担保されることになりました。それ自体は、理解されていても、実際の業務フローで、当該義務違反を犯さないような体制がとられているか問題のあるケースがありました。従事者のみが取り扱う書類を保管していた従事者が、役員からの指示を受けて、書類を渡してしまったケースです。従事者としては、役員からの指示であるため、問題ないと考えたのか、問題あるとは考えたものの指示どおりにしたかは明らかになりませんでしたが、このような事態が生じたのは、従事者の守秘義務について、従事者及び役員の理解が不十分であったことや文書管理体制が不備であったことが原因です。
最後に、経営幹部を被通報者とする通報についてです。このような場合、通報者は、通報してもそれが公正に取り扱われるか不安を抱くはずです。そのために、経営幹部からの独立性の確保に関する措置が求められています。社外の弁護士窓口があれば、通報者は、社内窓口ではなく、社外の弁護士窓口などを利用すると思います。しかし、社外の弁護士窓口が通報を受け付けた後、社内の担当部署に通報内容を知らせる際に、通常の従業員の担当者を相手とするのみでは、独立性が確保されているとはいえないでしょう。このような場合、社外弁護士と監査役や社外役員等との連絡ルートが確保されていることが必要となります。また、経営幹部を被通報者とする通報については、調査・是正措置における公正性や適正性が強く問われることになります。不十分な調査や是正措置であると、通報制度の信用性が毀損されることになります。役員の処分が不適正であるとの指摘を受け、処分を変更したケースもありましたが、公益通報制度の信頼確保のためには、できる限り、最初から適正な是正措置をとることが求められます。

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