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公益通報者保護特別委員会

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欧州での公益通報者保護法制に関する動き(2022年11月号)

2019年、欧州連合全体において共通の水準の公益通報者保護法制を導入するために、EU公益通報者保護指令(DIRECTIVE (EU) 2019/1937 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 23 October 2019 on the protection of persons who report breaches of Union law。)が成立しました。2023年12月に、同指令に基づく内部通報制度整備義務の猶予期間(対象は従業員50名から249名規模の民間事業者)が終了します。欧州に子会社を有する日本企業の中には、今から約一年後に向け、近々準備を開始されるという企業も存在するのではないでしょうか。

現状としては、日本親会社が中心となり、グループ全体の内部通報制度を管理しているという企業も少なくないと思います。猶予期間終了後は、欧州の各子会社が企業単位で管理する通報制度を設置することが求められることになります。グループ全体の内部通報制度を引続き活用することについて制限はないため、各子会社の内部通報制度に加えて、グループ全体の内部通報制度を維持する企業も存在するでしょう。このような場合、内部通報者は、いずれの制度に則って通報をするか、選択できることになります。各子会社で管理する通報制度を設置すると同時に、今後一年間は、グループ全体の内部通報制度を見直す時期にもなるかと思います。

もっとも、欧州連合加盟国の中には、EU公益通報者保護指令の国内法化が間に合っていない国が複数あるため、制度をどう設計すればいいのか読めないという問題が生じています。各加盟国は2021年12月までにEU公益通報者保護指令に従った法整備が義務付けられていましたが、現時点で国内法が成立しているのは、27か国中、クロアチア、キプロス、デンマーク、フランス、アイルランド、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポルトガル、スウェーデンの10か国と報告されています。対応策としては、EU公益通報者保護指令並びに子会社の所在国の現行法及び法整備の動向を把握し、法整備後にも円滑に調整できるような制度を設計せざるを得ない状況です。

EU公益通報者保護指令については、日本の公益通報者保護制度との違いがいくつか指摘できます。例えば、保護対象者には通報者の家族も含まれます。また、制度設計の際に考慮する必要がある重要な違いとしては、個人情報保護法制(GDPR)との関係です。通報者から取得した被通報者に関する個人情報は、被通報者の同意を得ずに、企業内部においてどの範囲で共有可能なのか。海外の親会社に共有しても問題ないのか。制度を設計するにあたって、様々な論点に直面することになりますので、早めに準備を開始することをお勧めいたします。

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