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公益通報者保護特別委員会

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シンポジウム開催のご報告(公益通報者保護法改正関連)(2020年7月号)

2020年2月7日、三会公益通報者保護協議会シンポジウム「ガバナンスとしての公益通報システムの課題~公益通報者保護法改正の視点と論点、弁護士の役割~」が開催されました。このコラムでは、シンポジウムの内容について簡単にご紹介いたします。
今回のシンポジウムの反訳文はこちらに掲載されていますので、ぜひご覧ください。
なお、本シンポジウム開催後の3月6日、第201回国会に公益通報者保護法の改正法案が提出され、衆議院での修正議決を経て、6月8日に成立しました(改正後の公益通報者保護法を以下では「改正法」といいます。)。

第一部:講演「公益通報者保護制度:その意義及びガバナンスとの関係」

東京大学社会科学研究所の田中亘教授から、特に、公益通報者保護とガバナンスの関係(特に内部通報体制)や企業グループにおける内部通報体制について、講演していただきました。
内容としては、取締役の内部通報体制を整備する義務の位置づけについて、取締役の内部統制システム構築義務の観点からの分析について、御見解を述べられました。
また、企業グループにおける内部通報体制に関して、2019年6月に公表された経済産業省のグループ・ガバナンス・システムに関する実務指針や、グループ相談窓口を設けていた親会社の責任が争われた事例(イビデン事件。最高裁平成30年2月15日判決(判時2383号15頁))について御紹介しつつ、その本来在るべき水準について重要な御示唆を提示されました。

第二部:パネルディスカッション

公益通報者保護法改正に関連する論点のうち、以下の4つの論点について議論されました。
各論点に関する改正法の内容は以下のとおりです。

①2号通報の保護要件
行政機関に対する通報(いわゆる2号通報)を行いやすくするという観点から、2号通報として、真実相当性がある場合の通報の他、通報者の氏名等を記載した書面を提出する場合の通報が追加されました(3条2号後段)。

②内部通報体制の整備義務
通報者が安心して通報ができるよう、また、事業者自らが不正を是正しやすくなるよう、事業者に対し、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等を義務づけています(ただし、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については努力義務)(11条)。

③通報担当者の守秘義務
通報者が安心して通報ができるよう、公益通報対応業務に従事する者に通報者を特定させる情報の守秘義務を課すこととし(12条)、その守秘義務違反に対する刑事罰(30万円以下の罰金)も導入されました(21条)。

④行政措置
事業者による不利益取扱いの抑止の観点からは、より効果的な不利益処分に対する行政処分の導入が望まれましたが、今回の改正では内部通報体制整備義務に関する行政措置(助言・指導、勧告及び勧告に従わない場合の公表)の導入にとどまりました(15条、16条)。

今回の法改正を受けて、今後、民間事業者や行政機関は、内部通報体制を整備する等の対応を迫られることになります。その対応を検討するにあたって、本シンポジウムは、理論的にも、実務的にも、非常に有益な内容であったと考えています。
ぜひ、詳細についてこちらからご確認いただければと思います。

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