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- 公益通報者保護検討会~法改正に向けて~(2024年7月号)
- 内部通報制度の社内周知と認知度の向上について(2024年5月号)
- 公益通報に関する情報を守るための具体策(2024年4月号)
- 改正後の公益通報者保護法が履行されない要因(2024年1月号)
- 内部通報制度とグリーバンスメカニズム(2023年11月号)
- 中小事業者における通報対応の体制整備について(2023年6月号)
- 公益通報を行い得る主体(2023年5月号)
- 公益通報制度を有効な制度とするために(2023年2月号)
- 欧州での公益通報者保護法制に関する動き(2022年11月号)
- 内部通報制度と持続可能性(サステナビリティ)(2022年9月号)
- 公益通報制度の活用について(2022年7月号)
- 内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の見直し(2022年5月号)
- 社内通報窓口の整備(2022年4月号)
- 「第二の窓」が広がる年(2022年1月号)
- 公的通報における通報者の保護の重要性(2021年11月号)
- 公益通報を受けた行政機関の対応について(2021年6月号)
- 改正公益通報者保護法において、事業者側に課せられる守秘義務について(2021年5月号)
- 事業者に求められる公益通報対応の体制整備について(2021年3月号)
- 改正公益通報者保護法に基づく指針の検討状況等について(2021年1月号)
- 「アフターコロナ・東証市場再編でのガバナンス体制と内部通報制度を考える」(2020年11月号)
- シンポジウム開催のご報告(公益通報者保護法改正関連)(2020年7月号)
- 内部通報窓口を絵に描いた餅にしないために(2020年1月号)
- 社内通報窓口担当者の皆さまへ2(2019年12月号)
- 「不都合な事実を歓迎する」ということ(2019年10月号)
- 内部通報制度を広く浸透させるために(2019年6月号)
- 居心地のよい社会の実現に向けて(2019年4月号)
- 公益通報者保護に関する最近の動き(2019年2月号)
- 内部通報制度と認証制度について(2018年12月号)
- コーポレートガバナンス・コード対応としての内部通報外部窓口の設置(2018年11月号)
- 社内通報窓口担当者の皆さまへ(2018年8月号)
- グループ会社などで働く皆さんへ~グループ会社等を含む一元的窓口への通報という選択肢~(2018年7月号)
- グループ会社の社長、役員、内部通報制度の実務を担う方々へ~社内内部通報制度、見直しのすゝめ~(2018年3月号)
- 昨今のデータ改ざん問題について(2017年11・12月号)
- 緊急開催!加計学園問題を契機としたシンポジウム(2017年9・10月号)
- 効果的な通報窓口のすヽめ(2017年8月号)
- 内部通報を明るくするための一工夫(2017年7月号)
- 通報者に対する不利益な取り扱いの禁止とガイドラインの改正(2017年6月号)
- 内部通報制度に関する民間事業者・労働者の実態調査について(2017年5月号)
- 通報窓口の「窓」のいろいろ(2017年4月号)
- 「内部告発」の意義を四文字熟語で言い表すと(2017年3月号)
- 公益通報者保護法ガイドラインの改正(2017年2月号)
- 通報窓口に通報がない会社は良い会社なのか?(2017年1月号)
- 事業者が公益通報窓口を設置するにあたって(2016年12月号)
- 公益通報って「社会」にとって良いもの?悪いもの?(2016年11月号)
- 「おせっかい」で、正義感にあふれた暖かみのある社会を~「いじめ」に見て見ぬふりは「もやもや」が残りませんか(2016年10月号)
- 公益通報制度の目的ってなんですか?(2016年9月号)
- 公益通報の具体例:入札談合(2016年8月号②)
- 公益通報の具体例:虚偽の広告・表示問題(2016年8月号①)
- セクハラは公益通報者保護法の対象となるか(2016年7月号)
- 通報窓口を設置する側のメリット(2016年4月号)
コーポレートガバナンス・コード対応としての内部通報外部窓口の設置(2018年11月号)
大企業や官庁は、公益通報しやすい環境整備の一策として、外部の法律事務所や弁護士を通報先(外部窓口)に加えることが多くなりましたが、当会への通報相談のなかには、外部窓口の信頼性に疑問や不信を投げかけてくるものがあります。
ところで、東京証券取引所は、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめた「コーポレートガバナンス・コード」(以下「CGコード」といいます)を定めています(2015年6月1日制定、2018年6月1日改訂)。本則市場(市場第一部・第二部)の上場会社は、コードの全原則について、マザーズ及びJASDAQの上場会社は、コードの基本原則について、実施しないものがある場合には、その理由を説明することが求められています。
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/index.html(外部サイト)
そして、CGコードの原則2-5及び補充原則2-5①は、内部通報制度について、以下の定めを置いています。
【原則2-5.内部通報】
上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る適切な体制整備を行うべきである。取締役会は、こうした体制整備を実現する責務を負うとともに、その運用状況を監督すべきである。
【補充原則2-5①】
上場会社は、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置(例えば、社外取締役と監査役による合議体を窓口とする等)を行うべきであり、また、情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律を整備すべきである。
上場企業は、上記の原則及び補充原則を遵守(コンプライ)するか、遵守しない理由を開示する必要がありますが、この補充原則に関しては、法律事務所等に外部窓口業務を委託することとし、かかる外部窓口の設置をもって「経営陣から独立した窓口の設置」を遵守(コンプライ)したと判断している企業も多いのではないでしょうか。
しかし、法律事務所等に外部窓口を開設すれば、それをもって、直ちに補充原則に「遵守(コンプライ)」したといえるのか、疑問がないわけではありません。
外部窓口となる法律事務所等自体は「経営陣から独立した窓口」に該当するといえるでしょう。しかし、その外部窓口が通報内容の匿名化だけを実施して、会社の内部窓口や内部通報制度の所管部門に、通報内容を"パス・スルー"するだけの体制である場合、その情報の実質的な受け手はその内部窓口・内部通報制度所管部門であるともいえ、「経営陣から独立した窓口」を設置したとは評価されない可能性もあるのではないでしょうか。例えば、経営陣の不正に関わるものが法律事務所等の外部窓口に通報されても、その通報内容が、経営陣からの独立性のない内部窓口・内部通報制度所管部門に報告され、これらの部門が通報への対応を行うこととなる場合、経営陣を対象とする適切な調査や是正措置は、余り期待できないといえます(少なくとも通報者は適切な調査や是正措置を期待しないでしょう)。
しかし、だからといって、上記補充原則の文理に忠実に従い、社外取締役・監査役(ないしはこれらの事務を所管する監査役室等。以下同じ)に通報窓口を開設し、社員からの通報や外部窓口からの通報報告を全て受け付ける体制にしたとしても、事業執行に携わらない社外取締役・監査役がその全ての通報に対応したり、調査を尽くすことは困難といえ、却って窓口が十分に機能しなくなるおそれがあります。
そこで、こうした点をどう解決するかが問題となるわけですが、法律事務所等に外部窓口を開設する場合には、外部窓口から会社に報告を行う際の報告先を、内部窓口・内部通報制度所管部門と、社外取締役・監査役というように、複数設定することが検討されるべきと考えます。外部窓口は、通報者とのコミュニケーションによって通報内容を的確に把握した上で、通報内容が経営に関わる重要な事案であれば社外取締役・監査役に報告し、現場レベルの事案であれば内部窓口・内部通報制度所管部門に報告するなど、通報内容に最も適した報告先を選択することとなります。当然のことながら、外部窓口には、このような判断を的確に行うために必要な専門的な知見と経験が求められることとなります。
企業は、法律事務所等に外部窓口を開設しただけで「コンプライ」したと安堵するのではなく、通報内容の報告先までを視野に入れて、CGコードへの対応状況を確認する必要があります。また、折角、設置した外部窓口ですから、その信頼性を社内外に積極的に広報することも重要だと思います。