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公益通報者保護特別委員会

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不正を見逃さない!実効性ある内部通報窓口とするために(2024年11月号)

内部通報制度(窓口)は、企業の健全性を図る"バロメーター"です。内部通報窓口が積極的に活用されている状況は、企業内の透明性やコンプライアンス意識の高さを示しており、従業員が安心して働ける職場環境であることを示唆しています。

しかし近年、通報者が公益通報をしたことを理由に不利益な取扱い(報復)を受けるなど、内部通報制度を軽視した事案が発生しており、その運用には課題も見えています。この点は、現在、消費者庁において開催されている公益通報者保護制度検討会においても議論されており、通報者への不利益取扱いに対する刑事罰の導入が検討されているところです。

参照:第6回公益通報者保護制度検討会(2024年11月6日)<資料3>公益通報を理由とする不利益取扱いに対する刑事罰について(消費者庁のウェブサイトへ移動します)

企業にとっては、従業員が安心して働ける職場環境を確保することは最重要です。そして、そのためには、職場における不正やハラスメントなどの問題を早期に発見し、適切に対処することが必要であり、これには"内部通報窓口の積極的な活用"が欠かせません。

しかし、通報者が報復などの不利益を恐れ、通報を躊躇するようでは、内部通報制度の実効性が損なわれるとともに、問題の発覚が遅れ、深刻な事態となる可能性があります。実際に、ニュースや新聞等で報道されている事案でも、内部通報制度が有効に機能していれば、早期に問題を把握でき、適切に対処できた可能性が高い事案は数多くあります。

内部通報窓口の積極的な活用のためには、 通報者を守り、実効性のある内部通報窓口を運用することが重要です。通報者は、企業をよりよくしたい、という思いで相当な覚悟をもって内部通報をしています。その思いに応えるためにも、 "通報者を守る"対応が企業の側にも必要不可欠なのです。

具体的に"通報者を守る"ために重要なポイントは、①匿名性の確保(通報者の保護)、②不利益取扱いの禁止という2つの視点です。

①匿名性の確保とは、通報者の氏名等、通報者を特定し得る事項を職場内外に漏らさないことであり、通報者が安心して制度を利用するために非常に重要なポイントです。公益通報者保護法においても、通報者を特定させる事項を漏らしてはならないことが明記されており、その違反には刑事罰が科されています(公益通報者保護法12条及び21条)。

②不利益取扱いの禁止とは、公益通報をしたことを理由とした解雇、降格、減給その他不利益な取扱いを禁止することであり、内部通報制度の信頼性を確保するために非常に重要なポイントです。公益通報者保護法においても、公益通報をしたことを理由とした解雇を無効とする等、不利益な取扱いを禁止しています(同法3条及び5条)。

"通報者を守る"ことは、内部通報窓口の信頼性を高め、従業員が安心して相談できる環境を整えることに直結します。信頼性の高い内部通報窓口を設置することは、企業内での不正行為やハラスメントなどの問題が生じた際に、従業員が迷わず通報窓口を利用することに繋がり、結果として企業内の不正行為を早期に発見し、適切な対処が可能となります。

実効性のある内部通報窓口を設置することは、このような"不正を見逃さない職場"を実現し、組織全体のコンプライアンス意識を強化する基礎になると考えています。

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