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公益通報者保護特別委員会

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公益通報制度の実効性向上に向けて(2024年10月号)

本ブログ前号でご紹介したとおり、現在、消費者庁において公益通報者保護制度検討会が開催されています。

この検討会では、公益通報者保護制度の実効性向上に向けた議論が続けられているところですが、他方で、公益通報者に対する報復がなされたのではないかとの疑念が生じる事案もいくつか報道されているところです。

公益通報者に対する報復は許されるものではありませんが、その通報内容を見てみると、通報者の所属する組織の信用にかかわる不正や、その組織のトップの進退にかかわる不正を告発する内容も多くみられます。

公益通報者保護制度は、事業者自身による自浄作用を促進することが重要な目的の一つになっていますが、上記のような不正については、それを認めることは事業者の活動に致命的な影響を与えかねないがゆえに、事業者自身による自浄作用を期待することは難しく、かつ、通報者に対して報復し、不正の隠蔽に動くことへのインセンティブも強いと考えられます。

そのため、公益通報者保護制度の実効性向上に当たっては、事業者による自浄作用の促進だけではなく、事業者外部への通報、例えば行政機関や報道機関への通報を保護して、事業者外部からの是正につなげる回路を活用することも忘れてはならないと考えます。

特に行政機関については、不正を直接是正する権限を有していますので、ぜひとも法執行の端緒として公益通報の活用にも目を向けていただきたいと思います。消費者庁が2023年度及び2016年度に民間事業者に対して実施した調査によると、どちらの年度の調査においても、不正発覚の端緒として内部通報が最も多く挙げられています。この調査結果からすれば、行政機関においても、通報制度が不正発覚の端緒として大いに機能することが期待されます。

もっとも、消費者庁が2023年に実施した就労者1万人へのアンケート調査では、勤務先の重大な法令違反を知ったとしても通報・相談しないと回答した人のうち少なくない割合がその理由として、自分が通報したことが知られて報復を受けることへのおそれや、通報に対して適切に対応してくれないと予想されることへの諦めを挙げています。同庁が2016年に実施した労働者3000人へのアンケート調査でも、行政機関などの外部への通報について、自分が通報したと知られてしまうことや通報に対して適切に対応してくれないことへの不安を感じる者が多くいるという結果が出ています。

通報制度の導入・運用には、その情報管理の繊細さや、対応の必要性が小さいと思われる通報にもまずは耳を傾ける必要が生じること等、難しい問題がありますが、窓口だけを設けても、通報者が上記のような不安を感じて通報が寄せられなければ、通報制度は機能しません。通報制度を導入・運用する事業者、行政機関におかれては、通報者の不安解消に正面から取り組むべく、通報の秘密の徹底及び通報に対して真摯に耳を傾けることへの意識づけに特に意を用いていただきたいと思います。

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