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- 公益通報制度の実効性向上に向けて(2024年10月号)
- 公益通報者保護検討会~法改正に向けて~(2024年7月号)
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- 公益通報制度を有効な制度とするために(2023年2月号)
- 欧州での公益通報者保護法制に関する動き(2022年11月号)
- 内部通報制度と持続可能性(サステナビリティ)(2022年9月号)
- 公益通報制度の活用について(2022年7月号)
- 内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の見直し(2022年5月号)
- 社内通報窓口の整備(2022年4月号)
- 「第二の窓」が広がる年(2022年1月号)
- 公的通報における通報者の保護の重要性(2021年11月号)
- 公益通報を受けた行政機関の対応について(2021年6月号)
- 改正公益通報者保護法において、事業者側に課せられる守秘義務について(2021年5月号)
- 事業者に求められる公益通報対応の体制整備について(2021年3月号)
- 改正公益通報者保護法に基づく指針の検討状況等について(2021年1月号)
- 「アフターコロナ・東証市場再編でのガバナンス体制と内部通報制度を考える」(2020年11月号)
- シンポジウム開催のご報告(公益通報者保護法改正関連)(2020年7月号)
- 内部通報窓口を絵に描いた餅にしないために(2020年1月号)
- 社内通報窓口担当者の皆さまへ2(2019年12月号)
- 「不都合な事実を歓迎する」ということ(2019年10月号)
- 内部通報制度を広く浸透させるために(2019年6月号)
- 居心地のよい社会の実現に向けて(2019年4月号)
- 公益通報者保護に関する最近の動き(2019年2月号)
- 内部通報制度と認証制度について(2018年12月号)
- コーポレートガバナンス・コード対応としての内部通報外部窓口の設置(2018年11月号)
- 社内通報窓口担当者の皆さまへ(2018年8月号)
- グループ会社などで働く皆さんへ~グループ会社等を含む一元的窓口への通報という選択肢~(2018年7月号)
- グループ会社の社長、役員、内部通報制度の実務を担う方々へ~社内内部通報制度、見直しのすゝめ~(2018年3月号)
- 昨今のデータ改ざん問題について(2017年11・12月号)
- 緊急開催!加計学園問題を契機としたシンポジウム(2017年9・10月号)
- 効果的な通報窓口のすヽめ(2017年8月号)
- 内部通報を明るくするための一工夫(2017年7月号)
- 通報者に対する不利益な取り扱いの禁止とガイドラインの改正(2017年6月号)
- 内部通報制度に関する民間事業者・労働者の実態調査について(2017年5月号)
- 通報窓口の「窓」のいろいろ(2017年4月号)
- 「内部告発」の意義を四文字熟語で言い表すと(2017年3月号)
- 公益通報者保護法ガイドラインの改正(2017年2月号)
- 通報窓口に通報がない会社は良い会社なのか?(2017年1月号)
- 事業者が公益通報窓口を設置するにあたって(2016年12月号)
- 公益通報って「社会」にとって良いもの?悪いもの?(2016年11月号)
- 「おせっかい」で、正義感にあふれた暖かみのある社会を~「いじめ」に見て見ぬふりは「もやもや」が残りませんか(2016年10月号)
- 公益通報制度の目的ってなんですか?(2016年9月号)
- 公益通報の具体例:入札談合(2016年8月号②)
- 公益通報の具体例:虚偽の広告・表示問題(2016年8月号①)
- セクハラは公益通報者保護法の対象となるか(2016年7月号)
- 通報窓口を設置する側のメリット(2016年4月号)
公益通報制度の実効性向上に向けて(2024年10月号)
本ブログ前号でご紹介したとおり、現在、消費者庁において公益通報者保護制度検討会が開催されています。
この検討会では、公益通報者保護制度の実効性向上に向けた議論が続けられているところですが、他方で、公益通報者に対する報復がなされたのではないかとの疑念が生じる事案もいくつか報道されているところです。
公益通報者に対する報復は許されるものではありませんが、その通報内容を見てみると、通報者の所属する組織の信用にかかわる不正や、その組織のトップの進退にかかわる不正を告発する内容も多くみられます。
公益通報者保護制度は、事業者自身による自浄作用を促進することが重要な目的の一つになっていますが、上記のような不正については、それを認めることは事業者の活動に致命的な影響を与えかねないがゆえに、事業者自身による自浄作用を期待することは難しく、かつ、通報者に対して報復し、不正の隠蔽に動くことへのインセンティブも強いと考えられます。
そのため、公益通報者保護制度の実効性向上に当たっては、事業者による自浄作用の促進だけではなく、事業者外部への通報、例えば行政機関や報道機関への通報を保護して、事業者外部からの是正につなげる回路を活用することも忘れてはならないと考えます。
特に行政機関については、不正を直接是正する権限を有していますので、ぜひとも法執行の端緒として公益通報の活用にも目を向けていただきたいと思います。消費者庁が2023年度及び2016年度に民間事業者に対して実施した調査によると、どちらの年度の調査においても、不正発覚の端緒として内部通報が最も多く挙げられています。この調査結果からすれば、行政機関においても、通報制度が不正発覚の端緒として大いに機能することが期待されます。
もっとも、消費者庁が2023年に実施した就労者1万人へのアンケート調査では、勤務先の重大な法令違反を知ったとしても通報・相談しないと回答した人のうち少なくない割合がその理由として、自分が通報したことが知られて報復を受けることへのおそれや、通報に対して適切に対応してくれないと予想されることへの諦めを挙げています。同庁が2016年に実施した労働者3000人へのアンケート調査でも、行政機関などの外部への通報について、自分が通報したと知られてしまうことや通報に対して適切に対応してくれないことへの不安を感じる者が多くいるという結果が出ています。
通報制度の導入・運用には、その情報管理の繊細さや、対応の必要性が小さいと思われる通報にもまずは耳を傾ける必要が生じること等、難しい問題がありますが、窓口だけを設けても、通報者が上記のような不安を感じて通報が寄せられなければ、通報制度は機能しません。通報制度を導入・運用する事業者、行政機関におかれては、通報者の不安解消に正面から取り組むべく、通報の秘密の徹底及び通報に対して真摯に耳を傾けることへの意識づけに特に意を用いていただきたいと思います。