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公益通報者保護特別委員会

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公益通報制度の活用について(2022年7月号)

本年6月1日から、事業者の体制整備の義務化等を内容とする公益通報者保護法の一部を改正する法律が施行されました。その主な内容については、過去数回の本コラムで紹介されています。改正法の施行に向けて、企業などでは体制の整備が行われてきました。
公益通報者保護法の目的は、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することとされています。企業にとっても不祥事を未然に防止するために有意義であることが指摘されてきました。公益通報者保護法が施行されたのは、2006年4月1日です。しかし、報道でも、しばしば取り上げられているように、企業等の不祥事はあとをたちません。なぜ、公益通報制度が有効に活用されないのでしょうか。
過去のコラムでも、その原因や解決法が取り上げられてきました。次のような指摘がなされています。
・できるだけ通報しやすい制度設計にし、社内の雰囲気作りも含めた環境を整え、できる限り問題を早く、広く察知する制度にすること。
・コンプライアンスが確定され意識として醸成、共有されてこそ、通報窓口という仏に魂が入る。
・窓口をオープンなものにして通報に対するネガティブな印象を払拭し、奨励するくらいの姿勢が、組織の風通しを良くする秘訣。
・内部通報がなされた後、その情報が誰にどのように伝達されることになるのか等のフローチャートを示すことで手続の透明性を確保すること。
・内部通報者の匿名性が確保されるとともに内部通報者が不利益な取り扱いを受けないことを定める規定を示す等して、内部通報者が保護されていると安心させること。

これらの指摘を参考にして、今回の改正を契機に、企業等において公益通報制度の一層の充実が図られることを期待しています。
一方、相談を受ける弁護士にとっても、公益通報制度はなかなか難しい問題です。
・公益通報の対象となる法律は、令和4年6月1日現在493本にも上っており、当該通報が公益通報にあたるのかどうか
・通報先として、どこを選択すべきか
・通報内容を証明する証拠資料の入手方法の適否をどのように見極めるか
・通報者が現実に不利益を受ける危険性がどのくらいあるか
など、判断に悩むことが多いです。

現在、東京弁護士会公益通報者保護特別委員会では、すでに出版されている「ここがポイント 事業者の内部通報トラブル」を、改正法を踏まえて、改訂作業中です。公益通報制度の運用に当たって、ぜひ参考にしてください。

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