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公益通報者保護特別委員会

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内部通報制度の社内周知と認知度の向上について(2024年5月号)

2024年2月に、消費者庁が「内部通報制度に関する就労者1万人アンケート調査の結果について」を公表しました。この調査は、就労者を対象に、内部通報制度への理解度や通報窓口設置の認知状況、通報に対する意識を把握することなどを目的に実施されています。この調査結果によると、勤務先の内部通報窓口の認知度について、従業員数が300人超の事業者に勤務する有効回答者のうち、その約4割が「設置されているかわからない」という回答であったとのことです。2020年6月の公益通報者保護法の改正以降、内部通報制度に対する理解が徐々に進んでいるように感じますが、この結果を見ると、社内周知や認知度についてまだまだ課題があるように思われます。過去のコラムにおいても取り上げられてきましたが、本コラムにおいても内部通報制度の社内周知や認知度の向上について改めて考えてみたいと思います。

まず内部通報制度について何を周知するかですが、公益通報者保護法に基づく内閣府による指針や消費者庁による当該指針の解説によると、公益通報受付窓口及び受付の方法を周知する必要があるほか、公益通報の意義や組織における内部通報の重要性などを従業員に認知させることが求められています。安心して内部通報制度を利用できるためには、単に内部通報窓口を設置したことや窓口の連絡先を伝えるだけでなく、会社のコンプライアンスを推進するうえで、なぜ内部通報の仕組みが重要であるかなどをわかりやすく伝えることも重要と思われます。併せて、誰が窓口なのか(社内窓口なのか社外窓口なのか)、通報内容はどのように扱われるのか(秘密が守られることなど)、通報後どのような手続となるのか(調査やフィードバックなどの手続の概要)などの具体的な情報を織り込むことも考えられます。

次に、周知の方法です。ポスターの掲示、携行カードの配布、メールやチャットでの案内、イントラネットでの掲示、朝礼や全社会での共有など様々な方法が考えられます。周知方法を選択する際は、会社の業態や働き方などを踏まえ、どの周知方法がより従業員の目につきやすいか、理解がしやすいかを考える必要があり、上記周知方法を複合的に活用することも考えられます。

2024年3月に消費者庁より公表された「企業不祥事における内部通報制度の実効性に関する調査・分析」では、経営トップへの提言の一つとして、ロールプレイング要素を含む研修の実施や、研修後の確認テストの実施なども有効な手段として紹介されています。例えば、新入社員や転入社員の研修、階層別研修、定期的に実施するコンプライアンスに関する研修などで、従業員が能動的に内部通報制度について考えるきっかけを設けることも有効な周知方法といえます。

このような社内周知に向けた取組みは継続的に実施することで、社内での理解がより深まります。定期的な周知活動に加え、社内アンケートなどを実施することで、定期的に周知状況を把握することも考えられます。また、内部監査を実施するなかで、内部通報制度の周知や浸透状況などについて確認することも考えられます。

以上は一例ではありますが、実効性のある内部通報制度を整備・運用するためには、社内周知や認知度の向上に向けて工夫し、継続していくことが重要であるといえます。  

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