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公益通報者保護特別委員会

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公的通報における通報者の保護の重要性(2021年11月号)

日本を代表する大企業において、内部通報の通報者の特定がなされ、そのため通報者に対する不利益な扱いがなされたのにもかかわらず、当該特定等を行った者に対して適正な処分等を行っていなかったとの記事が月刊誌に掲載され、物議を醸しています。大企業においてさえも、未だに通報者の保護が適切になされていない可能性があるということに、驚く方も多いと思います。そこで、公益通報制度の根幹である通報者の保護について、改めて説明をしたいと思います。

1 秘密保持の徹底
通報者の所属・氏名等が職場内に漏れることは、それ自体通報者にとって重大な不利益であり、法律上・事実上の不利益取扱いにつながるおそれもあります。通報者の秘密保持が確保されていないとなると、通報者は公益通報を躊躇することになり公益通報制度は機能しません。そのため、通報者の秘密徹底は公益通報の制度の根幹にかかわる重要なものなのです。
改正公益通報保護法は、公益通報を受けたり、通報対象事実の調査をしたり、その是正に必要な措置をとったりする業務である公益通報対応業務に従事する者(であった者も含みます。)に対して、通報者を特定する情報の漏洩禁止を義務付け(改正法12条)、違反の場合には30万円以下の罰金という刑事罰を科すこととしております(改正法21条)。このように、通報者の秘密保持の徹底については、刑事罰による禁止が法制度化されるほど、非常に重要なのです。

2 不利益処分の禁止
公益通報保護法3条は公益通報をしたことを理由とした解雇を無効とし、同法5条は降格、減給その他不利益な取扱いをしてはならないと定めております(改正公益通報保護法5条は、不利益取扱いの例示列挙に、降格及び減給に加えて「退職金の不支給」を加えております。)。
この不利益取扱いの禁止が徹底されなければ、自らのリスクを冒してまで「公益」を目的とした通報を行う者は限りなく少なくなると考えられ、公益通報制度はまさに「絵に描いた餅」となります。また、公益通報においては、通報後の事実調査も重要となりますので、不利益取扱い禁止は、通報者のみならず、通報を端緒とする調査に協力をした者に対しても徹底されるべきと考えます(この点については、事業者内の内規に規定すべきと考えます。)。公益通報制度を機能させるためにはこのような通報者及び協力者への不利益取扱い禁止の徹底が不可欠であり、仮に不利益取扱いを行った者がいた場合には、その者に懲戒処分その他適切な措置を講じることが必要と考えられております(消費者庁作成平成28年12月9日付け「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」11頁)。
公益通報制度をもって事業者の自浄作用を発揮させることによりコンプライアンス経営を実現させることができ、これにより事業者の社会的信用は高まります。そのため、公益通報制度の機能強化は事業者にとっても大きな利益になり、これには通報者の保護が重要です。事業者の皆さんは是非この点を念頭に公益通報制度を維持運営していただければと思います。

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