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公益通報者保護特別委員会

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内部通報制度と持続可能性(サステナビリティ)(2022年9月号)

2022年6月1日に改正公益通報者保護法が施行されました。この改正では、事業者に対し、内部通報体制の整備が義務付けられました。多くの企業が、この改正に対応するために、内部通報体制の整備に尽力されたのではないかと思います。

整備された内部通報体制が積極的に活用されていくためには、実際に企業で内部通報体制の運用に携わる方がこの制度の意義を理解し納得していることが重要です。 内部通報制度は、企業にとっても、問題を早期に把握し、自浄作用を働かせることができ、法令遵守が推進される点で意義・メリットがあると言われています。とはいえ、このような意義・メリットは、頭では理解できても、なかなか腹落ちしない、という方もおられるのではないかと思います。 そこで、企業にとっての内部通報制度の意義・メリットについて、少し違った観点からも考えてみたいと思います。

近年、企業においても持続可能性(サステナビリティ)が重要であると言われています。企業が長期にわたって存続していくためには、目先の業績だけでなく、企業活動が持続可能なものであることが重要である、また、企業の活動が社会の持続可能性にも貢献することで、消費者や取引先、投資家など関係者からの評価や信頼を高めることにもつながる、という考え方です。 消費者庁は、内部通報制度を「働きがいのある人間らしい雇用の促進」や「持続可能な生産消費形態の確保」の点から持続可能性に資するものであると位置づけています。また、「公益通報者保護法に基づく指針の解説」でも、「内部公益通報制度を積極的に活用したリスク管理等を通じて、事業者が適切に事業を運営し、充実した商品・サービスを提供していくことは、事業者の社会的責任を果たすとともに、ひいては持続可能な社会の形成に寄与するものである。」と説明しています。 また、企業による「人権の尊重」も、持続可能性をめぐる課題のひとつであると言われています。内部通報制度の活用を通じて権利侵害の是正・救済をはかることは、人権の尊重という観点から持続可能性に貢献するものである、ともいえるのではないかと思います(企業と人権との関係にご関心のある方は、日弁連「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)」をご参照ください。)。

このように、内部通報制度の積極的な活用は、持続可能性(サステナビリティ)のための取組みのひとつでもあり、企業活動を持続可能なものにし、関係者からの信頼や評価を高めることにもつながるということができるのではないかと思います。 このように考えることで、企業にとっての内部通報制度の意義・メリットの理解や納得感がより深まり、内部通報制度の積極的な活用につながれば幸いです。

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