東京弁護士会
公益通報者保護特別委員会

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「内部告発」の意義を四文字熟語で言い表すと(2017年3月号)

 内部告発とは、企業や個人の不正・不当な行為を内・外に伝え、その是正や処分を求める行為の総称をいい、その意義や役割は当ブログ(2016年11月号「公益通報って「社会」に良いもの、悪いもの?」)で書かれていますが、筆者が特に強調したい「内部告発」の意義は、通報を通じて組織が情報を把握し、問題が大きくなる前に組織内で不祥事を是正し、組織自らが自発的に不祥事を行ったことを社会に明らかにすることができ、これにより組織の信用を守ることにも繋がるという点です。不正や不祥事を内部で隠蔽するのではく、通報をきっかけにそれが是正され、風通しの良い組織がつくられれば、組織は信用され、発展していくことにつながるのだと思います。
 ここで、表題に戻るのですが、筆者としては、今から2000年前の中国での故事に由来とする「曲突徙薪」(きょくとつししん)こそが内部告発の意義を端的に表している、と考えています。
 「突」は煙突のことで、かまどの煙突の先の近くに薪があり、煙突を曲げて薪を移動しないと火事になると忠告したが、従わずにいると本当に火事になったという故事で、転じて、災いを未然に防ぐことを意味するようになりました。
「煙突」や「薪」の危うい管理を是正し、それが大火事にならないようにすることと似ていて、内部告発の役割は、組織の中に危ういものがあれば、それが小さいうちに、速やかに取り除き、不正がより大きな不正を招き、最終的に組織自体の瓦解という最悪の事態を回避することにあると思います。
 ただ、この故事には前後の話があります。「曲突徙薪」のアドバイスは家に泊まっていた旅人が行ったものなのですが、家の主人はこのアドバイスを無視し、何の対応もとりませんでした。そのため、後日、家が火事になり、たまたまとおりすがった別の旅人が必死に消火活動に行い、家の主人はこの消火活動にあった旅人を厚遇したのです。「曲突徙薪」のアドバイスをした旅人の言うことに真摯に耳を傾けていれば、火事にならなかったと思うのですが、なかなか報われないどころか、組織内で厳しい報復のおそれすらある、現代の通報者の立場の難しさを先取りしているように感じました。

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