東京弁護士会
公益通報者保護特別委員会

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「不都合な事実を歓迎する」ということ(2019年10月号)

我が国において、公益通報者保護法が施行されたのは2006年4月、既に13年が経過していますが、この法律の内容を正確に知っている、という方は、そこまで多くないかもしれません。
でも、「公益通報」という言葉は、ある程度認知されてきたように思います。
今(この原稿を執筆している時点では)、アメリカ合衆国のトランプ大統領が弾劾される可能性についての報道が出ていますが、この件は、政府高官の内部告発が発端だったとされています。
公益通報という言い方ではなく、内部告発と記載されている記事が多いのですが、報道の中には、告発者を「whistleblower」と記載しているものも見られます。このwhistleblowerというのは、笛を吹く者という意味ですが、この場合、警鐘を鳴らす者と考えれば良いでしょうか、米国において内部告発者、内部通報者のことを指します。
米国においては、公的部門における内部告発者を保護する法律は1989年に施行されています。また、民間部門においてはサーベンス・オクスリー(SOX)法やドッド・フランク法などの個別法によって保護されることになります。いずれにしても内部告発者を保護する意識は社会に浸透しており、不正を告発した者は、組織を是正するアンテナと勇気を持っていると評価され、ヘッドハンティングの対象となることすらあります。
我が国でも、組織内に通報窓口を設けたり、通報制度を創設したりする会社は増えてきていますが、担当者の方に上記のことをお話しすると、大変驚かれます。そういった立場の方であっても、通報、告発は、どこか「困ったもの」という意識があるのかもしれません。
もちろん、不正の事実を告げる「通報」は、それ自体が心地よいものではないかもしれません。でも、これによって、放置したら生ずるであろう大きな損害(人命や経済的損失、会社の信用や評価等)の発生を未然に防ぐチャンスが与えられているのです。
米国においては、こうした発想が良く理解され、告発者は尊重されます。そして、現に、国家の大統領の地位さえも、左右しうる影響力を持っているといえます。
我が国でも、少しずつ広まっている公益通報。不都合な事実の通報であっても、歓迎されるようになると良いですね。

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