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- 通報窓口を設置する側のメリット(2016年4月号)
公益通報者保護検討会報告書等の公表について(2025年1月号)
消費者庁は、令和6年12月27日、公益通報者保護制度検討会(以下、「検討会」)が取りまとめた報告書(以下、「報告書」)を公表しました。
参照:「公益通報者保護制度検討会 報告書 -制度の実効性向上による国民生活の安心と安全の確保に向けて-」(消費者庁のウェブサイト表示の意見書へ移動します)
公益通報者保護制度検討会は、公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和二年法律第 五十一号)附則第五条に基づき、令和6年5月に消費者庁に設置され、公益通報者保護制度の課題と対応について検討を行ってきました。報告書は、検討会におけるこれまでの議論を踏まえ、公益通報者保護制度の見直しの方向性を検討会の提言として取りまとめたものになります。
当会も、公益通報者保護法に関し、継続して公益通報者保護制度の実効性強化を求めて意見書を公表しており、令和7年1月9日にも、「公益通報者保護法の適切な改正を求める意見書」(以下、「意見書」)を公表しました。
参照:「公益通報者保護法の適切な改正を求める意見書」(東京弁護士会の意見書表示ページへ移動します)
ここで、報告書及び意見書の一部を紹介したいと思います。
報告書では、公益通報者保護制度の制度見直しとして、①事業者における体制整備義務の履行の徹底や実効性向上を図ること、②労働者等による公益通報を阻害する要因に適切に対処すること、③公益通報を理由とする不利益な取扱いを抑止し、救済措置を強化すること、④公益通報の実施状況や不利益な取扱いの実態に併せて通報主体の範囲を拡大すること等を挙げています。
そして、②公益通報を阻害する要因への対処として、a)公益通報者を探索する行為の禁止、b)公益通報を妨害する行為の禁止、c) 公益通報のために必要な資料収集・持出し行為の免責、d)公益通報の刑事免責、e)濫用的通報者への対応等を挙げています。
報告書は、a) 公益通報者を探索する行為の禁止に関して、公益通報者を特定することを目的とする行為を禁止する規定を設けるべきとしつつも、罰則を規定すべきとの意見については、今後、必要に応じて、慎重に検討すべきとしました。
報告書において、探索行為に関して、罰則を規定すべきとの意見については、慎重に検討すべきとしたのは、不利益な取扱いを伴わない探索行為自体が、罰則に値する反社会性の高い行為とまでは言えず、また、探索行為自体を不利益な取扱いの予備行為と評価すると、予備行為に罰則を規定している例は、放火予備罪(刑法第百十三条)、殺人予備罪(同法第二百一条)等の基本犯が重大な犯罪である場合など極めて限定的であることから、他の犯罪との均衡を保つことができないのではないかといった点等を考慮したものと考えられます。
意見書は、この点に関し、より踏み込んで、行政措置または刑事罰の導入により厳格な抑止を図るべきとしています。その理由として、通報者探索行為は、公益通報に向けた労働者等の動因を萎縮させると共に、公益通報を通じた真実解明と違法状態是正の目的を阻害することに繋がりかねないため、厳格なペナルティを課することによって抑止が図られる必要がある等と考えています。
報告書、意見書ともに、公益通報がなされた後、事業者内で公益通報者の探索行為が行われることが、公益通報を躊躇する要因になる点は概ね一致しており、今後、公益通報者を探索する行為について行政措置または刑事罰を導入すべきかどうか、より議論を深化していくことが望まれます。
また、公益通報の調査担当者の中には、公益通報者探索行為に関し、対象事実が探索行為と評価できるか否か、判断に悩むこともあるのではないでしょうか。次期改正法案の検討に当たっては、規制される探索行為の内容を法や法定指針に例示列挙するなどより、公益通報の調査担当者にとって判断が容易で、かつ、明確性を確保した制度への見直しも望まれます。