東京弁護士会
公益通報者保護特別委員会

公益通報者保護特別委員会

 

昨今のデータ改ざん問題について(2017年11・12月号)

 我が国のメーカーが出荷前検査のデータを組織的に改ざんしていたとの報道が相次いでいます。データ改ざんは、製品についての受入検査が省略されていることを逆手に取り、需要家に無断で不適合品の出荷をしようとの意図に基づく行為であり、メーカーに対する信頼を裏切るものです。
 報道の対象となった某メーカーは、契約で定められた仕様を遵守することへの関係者の意識が希薄であったことがデータ改ざんの一因となったと述べています。これらの関係者らは「契約上の仕様を遵守せずとも問題はない」「過剰仕様である」などの理解から不適合品を出荷したことを正当化していたようですが、原材料ないし部品を納入する側はそのようなことを判断する立場にはないはずで、この姿勢は大いに問題です。ただ、複数のメーカーで勤務した筆者の経験上、技術者その他の役職員がこのような理解に陥る(ないしは追い込まれる)ことは、それほど珍しいことではないように思います。メーカーは、このような事情ないし可能性の存在を前提として、不正の防止や早期発見のための仕組みを構築するなどの対策を行う必要があるといえそうです。
 もっとも、このような対策を行うことは、そう簡単ではなさそうです。不正を早期に発見するための有効な仕組みの一つとして、社内の通報受付窓口への通報を促すこと(内部通報制度)が考えられます。しかし、そもそも通報が期待される役職員の側が「契約が間違っている」と考えてしまう危険があることからすると、今回のような場合においては、内部通報制度のみに多くを期待することは難しいと思われます。そこで、役職員の意識改革を図るために社内教育を充実させることも考えられますが、即効性はありません。場合によっては、事業や受注のあり方全体を再検討することも視野に入れなければならないのかも知れません。
 今回のようなデータ改ざんの問題は、状況次第で他のメーカーでも起こり得るものです。各社は、今回の問題を契機として、自社の体制を再点検することが求められるように思います。

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