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公益通報者保護特別委員会

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政府が公益通報者保護法の改正案の骨子を示しました(2025年3月号)

政府は、令和7年1月28日、自民党の会合で、公益通報者保護法の改正案の骨子を示しました。

公益通報者保護法は、令和2年の改正(令和4年6月施行)により、新たに事業者の体制整備義務や従事者指定義務及び従事者の守秘義務が規定され、より実効的な制度となることが期待されました。

しかし、令和5年度の消費者庁の実態調査によれば、多くの企業において、内部通報制度が十分に機能していない実態が明らかになっています。

そこで、公益通報者保護制度の課題と対応の検討を目的として、令和6年5月に消費者庁に公益通報者保護制度検討会が設置され、公益通報者保護法の改正を視野に、有識者により継続的に検討が行われてきました。

本ブログの前号でも記載した通り、令和6年12月27日には、公益通報者保護制度検討会が取りまとめた報告書が公表されましたが、この内容を踏まえ、今回政府が冒頭の改正案の骨子を作成しました。

政府の作成した改正案の骨子においては、事業者が内部通報の窓口の担当者を配置しない(従事者指定義務違反)場合に、国が立入検査を行う旨の規定を新設し、また行政の是正命令に従わない場合に刑事罰が科されることが盛り込まれています。

また、事業者が正当な理由なく内部通報者を特定しようとする行為が原則として禁止されています。これは、昨年発生した兵庫県知事のパワハラ疑惑問題において、内部告発をした元県幹部が、特定された後に懲戒処分を受けたことが問題視されたことも踏まえての改正です。

さらに、改正案においては、内部通報を理由として従業員を解雇や懲戒処分にした場合に、事業者や意思決定に関与した個人には刑事罰が科されます。具体的には、通報者を解雇や懲戒処分にした事業者には3000万円以下の罰金が科せられ、意思決定に関与した個人には、6ヶ月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金が科されます。但し、それ以外の配置転換やハラスメント・嫌がらせ等の不利益処分に対する刑事罰ついては、客観的に明確な認定が可能かどうか議論が有り得ること等から、将来的課題とし今回の改正には盛り込まれていません。

また、内部通報を理由とする解雇や懲戒処分を受けた通報者が事業者に対して民事裁判を起こした場合には、当該解雇や懲戒処分が「公益通報を理由とすること」についての立証責任について、事業者側に転換されるものとされています。

一方で、現行法においては、通報を理由とした民間企業による解雇、降格、減給といった不利益な取扱いは禁止されているものの、公務員については明記がなく、地方公務員法や国家公務員法などの規定を適用することとなっています。

この点、政府は、公務員への不利益処分についても明確に禁止し、通報を理由とする分限免職(民間企業における解雇に相当します)や懲戒処分の意思決定に関与した公務員に対しても刑事罰を導入する方針です。

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