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公益通報者保護特別委員会

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2025年6月11日公布の公益通報者保護法改正により、公益通報者の範囲にフリーランスが追加されました。(2025年9月号)

2025年6月11日に公布された公益通報者保護法により、改正内容の一つとして公益通報者の範囲が拡大されることになりました。改正法の施行は、公布日(2025年6月11日)から1年6か月以内で政令により別途定める日とされており、2026年内の施行が見込まれます。

1.現行法における公益通報者の範囲

現行法で公益通報者となるのは、労働者、退職者及び役員です(公益通報者保護法2条1項)。なお、取引先事業者の労働者、退職者及び役員については、役務提供先である事業者の労働者等には当たりませんが、一定の要件を充たした場合には保護されます。

2.改正法における公益通報者の範囲

近年、働き方の多様化により、フリーランスを起用する企業が増えているかと思います。フリーランスは、労働者と同様に取引先の不正を知りえる立場にありますが、雇用関係にないことから「労働者」に該当せず、公益通報をしたとしても保護の対象とならないため、公益通報を理由に業務委託契約の解除や取引の削減等の不利益な取り扱いを受ける懸念から通報しない(できない)というケースがありました。

そのため、今回の改正によって、公益通報者の範囲に事業者と業務委託関係にあるフリーランス及び業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスを追加することになり、公益通報したことを理由とする業務委託契約の解除、取引の数量の削減、取引の停止、報酬の減額その他の不利益取り扱いを禁止することになりました(改正公益通報者保護法第2条1項3号、第5条)。

3.今後の課題

公益通報者保護法は、事業における法令違反を認識して公益通報した場合に、不利益取り扱いを受けることがないよう法的に保護することを目的としています。今回の改正は、公益通報者保護制度のさらなる強化を目的としており、実態に合わせて公益通報者の範囲を拡大したことは、かかる目的を達成するための第一歩になったと考えられますし、企業にはより一層の体制整備と通報者保護への配慮が求められます。

もっとも、第9回公益通報者保護制度検討会における報告書によれば、「フリーランスと業務委託事業者との関係は、取引関係であり、雇用関係ではないことから、公益通報をしたことを理由とする取引関係上の不利益な取扱いについて刑事罰を規定することの要否については、今後の立法事実を踏まえ、必要に応じて、検討すべきである」としています。刑事罰がないことに対する影響(①通報者の制度への安心・信頼、事業者の経済活動の自由度等)について今後も注目が集まっています。

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