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第48回 人権擁護大会プレシンポジウムのご報告(2025年12月号)

棚橋 桂介 (東京弁護士会憲法問題対策センター事務局長)
人権擁護大会プレシンポジウムのご報告

2025年10月14日、第67回人権擁護大会第2分科会シンポジウム「再び戦争の惨禍が起こることのないように「危機の時代」の私たちの選択~」のプレシンポジウムとして、信濃毎日新聞編集委員の渡辺秀樹さんを講師にお招きして、「権力監視の報道と平和憲法」というテーマでシンポジウムを開催いたしました。

渡辺さんは、連載「憲法事件を歩く」で石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞「草の根民主主義部門」大賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞、むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞特別賞を受賞、スクープ「判決文コピペか」でメディア・アンビシャス大賞メディア賞、連載「芦部信喜 平和への憲法学」で平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を受賞されたジャーナリストで、著書に「芦部信喜 平和への憲法学」(岩波書店、2020年)、「憲法事件を歩く」(岩波書店、2025年)があります。

シンポジウムでは、国家公務員が休日に政党機関紙を近所に配布したことで国家公務員法違反の罪に問われたが最終的に無罪とされた事件(堀越事件)、覚せい剤事件の検挙率を上げるため、どんな容疑で逮捕した者でも全員から尿を提出させて調べることを長野県警本部長が指示していたことが発覚し、長野県弁護士会が重大な人権侵害行為があったとして県警に警告し、覚せい剤使用の疑いが濃い者に限って、採尿の目的をよく説明した上で採尿するよう運用が改善された事件、長野県知事が県護国神社の支援組織の会長を務め、社殿改修の寄付集めにも関わるなどしたことが発覚し、長野県弁護士会が憲法の政教分離に違反する疑いが極めて強いとの見解を公表し知事に是正を求め、知事が支援組織の会長を辞任するに至った事件等を題材に、報道の使命は戦争を二度と起こさせないことであり、そのためには戦争への反省が随所に刻まれた日本国憲法を物差しとして国家権力を監視する必要があること、日本国憲法は、9条や前文だけでなく、その全てが戦争防止の役割を担っていること、平和憲法の理念と現実政治の隔たりが進む中、これを埋める闘いとして憲法訴訟があること、訴訟にまではならなくても、報道された問題点に対し弁護士会が的確に反応し、国家権力を監視する役目を果たし、それにより状況に改善が見られた事例も確実に存在すること等をお話しいただきました。

当日は、会場及びオンラインで約80名の方にご参加いただき、「現実を憲法の理念に近づけていくことも報道の重要な役割だ」との渡辺さんの言葉を胸に刻みました。

第67回人権擁護大会第2分科会シンポジウム「再び戦争の惨禍が起こることのないように「危機の時代」の私たちの選択~」は、2025年12月11日(木)12時30分から、出島メッセ長崎コンベンションホールBにて開催されます。このシンポジウムはウェブでも配信されますので、是非多くの方々にご参加・ご視聴いただければと思います。

◆第67回人権擁護大会・シンポジウム(日本弁護士会連合会ウェブサイト)
https://www.nichibenren.or.jp/event/year/2025/251211_12.html

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