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憲法問題対策センター

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第54回 靖國神社を巡る東弁会長談話(2026年3月号)

弁護士 内田 雅敏(憲法問題対策センター委員)

かって、小泉首相(当時)が、「伊勢神宮参拝については批判されないのに、何故、靖國神社参拝は批判されるのか。日本の総理大臣として日本国中、行けないところは何処にもない」と嘯いたことがあります。後段については、「米軍基地内にも自由に入ることが出来ますか」と突っ込みを入れたくもなりますが、それはさておき、公人としての伊勢神宮参拝は憲法20条政教分離原則違反ですが、靖國神社参拝はそれに留まらず、さらに憲法前文「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」、及び9条の平和主義に反します。公人による靖國神社参拝が政教分離原則違反なことは、国内問題ですが、憲法の前文及び9条の平和主義に反する部分は国内問題である、と同時に近隣アジア諸国との間での外交問題でもあります。

靖國参拝批判に対して、「戦没者の追悼は何処の国でもしている。内政干渉だ」という反論があります。そうです。戦没者の追悼は何処の国でもしています。毎年8月15日、武道館で行われる全国戦没者追悼式、これを中国、韓国等が批判することはありません。中国、韓国等からの批判は戦没者追悼に対してでなく、それを靖國神社で行うことに対してです。何故でしょうか。

靖國神社発行「やすくに大百科」は以下のように述べています。

〈......日本の独立と日本を取り巻くアジアの平和を守っていくためには悲しいことですが、外国との戦いも何度か起こったのです。明治時代には「日清戦争」、「日露戦争」、大正時代には「第一次世界大戦」、昭和になっては「満州事変」、「支那事変」そして「大東亜戦争(第二次世界大戦)」が起こりました。戦争は本当に悲しい出来事ですが、日本の独立をしっかりと守り、平和な国として、まわりのアジアの国々と共に栄えていくためには、戦わなければならなかったのです。〉

日本の近・現代における戦争をすべて正しかったとする「聖戦史観」(大東亜戦争史観・植民地解放史観)です。日本の植民地支配と侵略戦争の責任を認めないこの歴史観は、世界に通用せず、また、1995年8月15日、村山首相談話(外務省ウェブサイト)等、歴代の日本政府の公式見解にも反します。このような歴史観に拠って立つ靖國神社は戦没者追悼の場として相応しくはないのです。

2013年12月26日安倍晋三首相(当時)の靖國神社参拝に対して、中国、韓国等、日本の侵略と植民地支配に呻吟したアジア諸国はもちろんのこと、米国等からも厳しい批判がなされました。

当時の東京弁護士会菊地裕太郎会長も同日付で、「靖国神社は一宗教法人に過ぎず、国政の最高責任者である内閣総理大臣がその地位にあるものとして靖国神社に公式参拝することは、靖国神社を援助、助長、促進する効果をもたらすものとして、政教分離原則に違反する疑いが強い。加えて、靖国神社は、先の「大東亜戦争は正しい戦争だった」とする歴史観(聖戦思想)に立ち、A級戦犯を合祀しているだけではなく、そもそも戦死者の「追悼」施設ではなく「顕彰」施設である点にその本質がある。すなわち、国のために戦死することを最大の栄誉としてまつる精神システムとして機能してきた点を、見逃すことは出来ない」と厳しく批判しました。

今、「台湾有事」が喧伝され、自衛隊員の犠牲者も想定され、靖國神社の宮司に元海自海将、総代に元陸自幕僚長、防衛大生の集団参拝など、自衛隊と靖國神社の親密さが公然と語られる中、改めて靖國神社に関する前記東弁会長談話を反芻しております。

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