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憲法問題対策センター

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第57回 古くてあたらしい憲法のはなし⑱「世界情勢が変わったから憲法9条も変えなければならない」のか ~世界はまだ憲法9条に追いついていない~(2026年5月号)

弁護士 津田二郎(憲法問題対策センター副委員長)

今年も憲法記念日(5月3日)がやって参りました。今年は憲法が公布されてから80年目。皆さんにも是非年に1度、この機会に憲法に思いを致していただきたいと思います。

憲法に書いてあることは、大雑把にいって3つです。

①国民が国のあり方を決めるということ。言い方を変えると「国民主権」です。
②戦争はしないということ。「平和主義」ともいいます。
③一人一人の「自分らしさ」を国が邪魔しない、「自分らしさ」を実現するために国が援助すること。これが「基本的人権の尊重」の考え方です。

このうち、「平和主義」は憲法9条に定められています。憲法9条は、「戦力不保持」、つまり戦争に使える武器や装備を持たないこととともに、「交戦権の否認」、つまり国が戦争を行う権利そのものを放棄している点に特徴があります。

この憲法9条について、「世界情勢が変わったから憲法9条も変わらなければならない」などといって憲法9条を変えるべきだという人たちがいます。

我が国が日本国憲法を定めて効力を持たせた1947(昭和22)年以降、世界では、朝鮮戦争、ベトナム戦争、印パ戦争、中東戦争、イラン・イラク戦争、フォークランド紛争などの戦争・紛争が世界各地で続き、同時に米ソの冷戦が続きました。1960年代から80年代には韓国、フィリピンに軍事政権が誕生したりするなどもしました。

ソ連崩壊に伴う冷戦終了後も、アメリカが湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争を起こした上、今年に入ってベネズエラに軍事侵攻し、さらにイスラエルとともにイランに先制攻撃をしました。さらにはイスラエルのガザ侵攻、ロシアのグルジア侵攻、ウクライナ侵攻などそのほか枚挙に暇のない戦争・武力行使が繰り返されています。

このように、憲法制定時から現在まで、自国の利益のために軍事力を使うという「パワーポリティクス」が世界を席巻しており、東アジアにも軍事的な危機があったことが分かります。しかし日本は一度も他国と戦争をしたり、他国の戦争に巻き込まれたりしませんでした。

憲法9条があったことによって「平和国家」が保たれていたことは国会答弁で高市首相も認めています。憲法9条ほど徹底した平和主義を持った国はほかにはないのですから、時代がまだ憲法9条に追いついていないともいえます。

2026年3月、アメリカのトランプ大統領からホルムズ海峡への自衛隊派遣を打診された際も、高市首相は憲法9条を理由にその要請を断ったともいわれています。冷戦中もその後も世界の戦争に巻き込まれず、戦争に加わらずに日本がいられたのは、まさに憲法9条があったからです。

憲法9条の改正は、どんなに言い訳しても今よりも戦争に参加しやすくすることにほかならず、その考え方は、前世紀から続く古い考え方でしかありません。変わるべきは憲法9条ではなく、自国の利益のために軍事力に頼るという考え方ではないでしょうか。

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