アクセス
JP EN
憲法問題対策センター

憲法問題対策センター

 

第58回 最低賃金の季節がやってきた!--「最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明」について(2026年7月号)

弁護士 山川幸生(憲法問題対策センター委員)

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定め、使用者は、時給ベースで最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

毎年6月下旬から7月上旬にかけて、厚生労働大臣が、中央最低賃金審議会に対し、地域別最低賃金額の改定の目安について諮問します。その目安を参考として、各都道府県ごとに設けられている地方最低賃金審議会が、地域別最低賃金額を審議し、毎年9月末ころまでに答申して、最低賃金額を決定します。毎年6~10月は、最低賃金のニュースが世間を賑わすシーズンなのです。

東京弁護士会は、2026年5月25日、「最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明」を発出しました。この会長声明の重要性について、考えてみましょう。

最低賃金は、憲法27条2項に規定された労働条件についての基準の具体化の1つであるとともに、憲法25条に基づき、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう保障するものです。最低賃金は、生活保護とともに、生存権保障の両輪をなす重要な制度です。

最近、現在の最低賃金額は低すぎるのではないか、という指摘があります。

諸外国では、日本よりも高い最低賃金を定めている国が少なくありません。2025年10月に改定された東京都の最低賃金額は時給1226円です。これに対し、オーストラリアの最低賃金額は2026年7月から時給26.44オーストラリア・ドル(2026年6月19日終値の為替レートで約2989円)になります。

また、最近の物価高のため、家計の生計費も増大しており、最低賃金はこれをカバーしていく必要もあります。上記東弁会長声明が引用する調査によれば、都内で若者が自立し人間らしく生活するために最低必要な生計費は、時給換算で最低賃金額を600円以上、上回っていると報告されています。

政府は、2020年代に最低賃金全国平均1500円という目標を掲げていますが、こうした状況を踏まえると、更に大幅な最低賃金の引上げが必要です。

もっとも、賃金の引き上げは、体力の弱い中小企業の経営を圧迫しかねません。価格転嫁ができるよう、国の監視によって公正な取引を確保することや、社会保険料の事業主負担分の減免などが必要不可欠です。

賃金の上昇は消費の増大につながり、経済の好循環の呼び水になります。最低賃金の引上げが、市民生活を向上させるとともに、日本経済を活性化させる1つの起爆剤になってほしいと考えています。

憲法問題対策センターメニュー